2017-11

5・14(土)ユベール・スダーン指揮東京交響楽団定期

   サントリーホール  6時

 シェーンベルクの「室内交響曲第2番」、メンデルスゾーンの「ヴァイオリンとピアノのための協奏曲ニ短調」、ベートーヴェンの「英雄交響曲」というプログラム。

 前半の2曲は、日本のオケの演奏会では滅多に聴けないものだ。こういうプログラムでもほぼ満席になっているのは、スダーンと東響のコンビの人気が今や定着しているからであろう。オケとそのシェフとの呼吸がぴったり合って、独特の個性を確立できているというのは、素晴らしいことである。

 冒頭のシェーンベルクなど、かなり渋い曲だが、これは実に緻密に堅固に、有機的に組み立てられた演奏で、面白く聴けた。
 二つの楽章の作曲年代は30年も離れているものの、基本的には初期の調性音楽の手法で纏められているだけに、聴き易いということもあろう。

 この重い雰囲気を一瞬にして振り払うのが、次のメンデルスゾーン。なかなか見事な選曲配列である。ピアノのアレクサンダー・ロンクィヒが「本人の判断により来日を取り止めた」ため、児玉桃が代役として出演していた。
 だがやはり、演奏での主導権を一手に握ったのは、ヴァイオリンのクリスティアン・テツラフであろう。もともとヴァイオリンの華やかな活躍が目立つ曲でもあるのだが、テツラフの伸びやかでありながら、どこか精妙に制御されたところもある鮮やかなソロで聴くと、いっそう魅力的な協奏曲に思えて来る。
 児玉桃はやや控え目で、テツラフの盛り立て役に回ったような演奏になっていたが、もう少し「図々しく出しゃばって」も良かったのではないかという気もする。

 後半は「英雄」。何と弦16型で、しかも第1楽章最後の例の第1主題におけるトランペットも最後まで全部吹かせるという、スダーンにしては意外な(?)方法を採っていた。
 大編成の弦には柔らかくたっぷりと弾かせるというスタイルなので、極めて豊麗な音色になる。これに対して楽譜通りの2管編成による管は――ホルン(3本+アシスタント)を鋭い響きで吹かせていたのを除けば、その他は「彼方の奥の方から」響かせるといったイメージに感じられた。

 とはいえ、フルートのソロもオーボエのソロも、要所では巧みに明確に浮彫りにされており、この辺はスダーンと東響の呼吸の良さだろう――1番オーボエの荒惠理子は、相変わらず凄い人気だ。カーテンコールの時に2階天辺から「ブラーヴァ、エリコ!」なんて叫んだ人がいたようだが? 

 今日の「英雄」、スダーンとしては比較的ストレートに構築していたのではないかと思うが、どうか? 第1楽章など、綿密につくられてはいたが、何かあっさりと進められるので、少々意外でもあった。だが、第1楽章コーダでの追い込みや、スケルツォ楽章で弦と管が短く掛け合いをする個所でのアクセントの変化、その他第2楽章や第4楽章の一部などでも、スダーンならではの精妙な味が発揮されていた。
 最も完璧な出来を示していたのは、スケルツォであろう。また全曲大詰めのプレストでも、強力な弦楽器群の渦巻く響きが、壮麗な迫力と緊迫感とを生み出していた。

     →モーストリークラシック8月号 公演Reviews
 

コメント

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この演奏会、やはり、<<スケルツォ>>での<<弦と管が短く掛け合いをする個所でのリズム>>を聞きに行ったようなものでした。これは、他に変え難いものでした。
緊張感があって、Pブロック側から観ると、どんなそれぞれの奏者の右手の動き方と左手のボーイング、とても面白かったです。(こんなアクセントのつけ方になるんだって)

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