2020-04

4・30(土)下野竜也指揮東京都交響楽団

   東京オペラシティコンサートホール  2時

 「作曲家の肖像」シリーズ。今回はリムスキー=コルサコフ・プログラムという、日本のオーケストラとしては珍しい演奏会。

 前半に交響組曲(交響曲第2番)「アンタール」、後半に「ピアノ協奏曲」、「スペイン奇想曲」、序曲「ロシアの復活祭」。
 曲の配列もちょっと変わっているが、これは「アンタール」のみが最後を静かに結ぶ曲なので、コンサートとしての効果を考えてのことだろう。

 とにかく、わが国では「ロシアの復活祭」などナマで聴ける機会はなかなか無いし、まして最初の2曲が演奏されることは稀有である(ここに「シェエラザード」なんかを入れるありきたりの選曲にしなかったところが、いかにも「下野の指揮」らしくて、面白い)。ロシア国民楽派の作品が好きな私としては、有難いプログラムだった。

 リムスキー=コルサコフの作品というのは、要するに極論すれば、楽器編成を変えて同じテーマを何度も繰り返して行くだけ(?)みたいなものだから、指揮者とオーケストラが如何にカラフルな音を出せるかということに成否がかかって来る。
 ロシアのオーケストラがこれをやると、本当にあのパレフやマトリューシカのように鮮やかな色彩感があたりを満たすという感じになるわけだが、今日の下野竜也と東京都響は、さすがにそこまでは行かぬものの、ダイナミックな力感と、エキゾティックな味と、壮麗なサウンドとで、なかなか見事な演奏をしてくれた。

 「ロシアの復活祭」など、とかく同じモティーフの繰り返しばかりで単調になりかねない曲だが、これほど「持って行き方の巧かった」演奏に聞こえたのは、マルケヴィッチの指揮した古いレコード以来のことであった。
 「ピアノ協奏曲」では、小川典子がソリストをつとめた。彼女の豪壮な演奏が、この曲を見違えるほど華麗なものに聴かせてくれたことも特筆すべきであろう。
 コンサートマスターは、今日は矢部達哉。「スペイン奇想曲」でのソロも、すこぶる良かった。

 かくのごとく、演奏はよかった―――のだが、冒頭にはまたもバッハの「アリア」の演奏と、起立黙祷が行われた。都響は4月の演奏会で、毎回これを行なったことになる。
 前回(24日)にも書いたことだが、犠牲者への追悼の祈りを捧げることは、少しも吝かではない。しかし、物事には何でも切り上げ時というものがあるのではないか?
 むしろ私が都響の姿勢に疑問を感じるのは、今ごろまで判で捺したように同じことを繰り返すほど誠意を示したいなら、なぜ震災直後から4月14日までの定期まで、演奏会を一切やらずに、音楽家としての責任を放棄してしまっていたのか、ということなのである。

 下野は3月19日には、早くも読響とのチャリティー・コンサートを行っていたが、その彼が今日はメインのプログラムの終了後にスピーチをして、「指揮者としての自分は、被災地に行ってスコップを握ることが出来ぬとすれば、音楽家としての責任を果たすのみです。ここにいる都響のみなさんも、同じ気持だろうと思います」という意味合いのことを述べていた。
 彼自身はごくまっとうなことを喋ったに過ぎないが、震災後1ヶ月も「職場放棄」同然だった都響にとっては、これほど痛烈な皮肉はなかったのではないか。

 そのバッハの「アリア」は、今日はストコフスキー編曲版が使われたのが、せめてもの趣向か。またアンコールには、リムスキー=コルサコフの「雪娘」からの「道化師(軽業師)の踊り」が賑やかに演奏された。

 客席はほぼ満員。土曜日のマチネーは、受けがいいのだろう。
 私の隣にいた老夫婦の奥さんは、演奏最中に咳込んだと思ったら、バッグからポット(というより魔法ビン)を出し、蓋をはずし、おもむろに中味を注いで、ゆっくりと飲みはじめた。パチャパチャと注ぐ音がしても、曲はドンチャカドンチャカ鳴っている「アンタール」だから、実害はない。何とも可笑しい光景であった。
 しかもその奥さんは、小川典子がアンコールをやらずに引っ込むと、「1曲くらいやってくれたっていいじゃないの、ケチねえ」とダンナにささやいたのであった。

コメント

水筒のおばちゃんの記述、批評では読めない、日記ならでは。猫笑う!

都響さんの姿勢は、「都」と名がつくところからして、東京都知事さんの地震直後からの一連の自粛に関する言動の影響ですかニャあ。でも、猫は前にも投稿したニャれども、文化庁は芸術推奨しとるニャりよ。(ようやく4月12日だったけんども。)そうでなくたって、音楽はそもそも社会に心の栄養提供するんだ、多分猫にもニャ。音楽家、がんばらニャあ!

20年以上会員をやってますが、事務局トップの一部が会員より都知事を上位者とみなしていると今回わかりました(知事はもう理事でもなんでもないんですけどね)。
脊髄反射的にお金に頭を下げなきゃならないのなら適切な判断です。

とはいえ、そのように反射する人はオケではなくご自身の地位とお金に大層執着のある人でございましょう。ナチュラルな形で交通事故を起こしていただき、確保したつもりになってる利得をチャラにしていただくのが一番かと思います。
大丈夫ですよ、ひき殺しても交通刑務所3年でOKですから、命が無事ならもう安パイっす。刑務所出て都知事んとこいって職を斡旋していただければ選び放題でしょう。地位とそれに見合うお金は保証できませんが。

トップが保身に走るのなら五月の定期はS席A席の会員全員ボイコットして空席にしてみましょうか。返金するじゃなし、都響トップの人は痛くもかゆくもないだろうし、都知事は「馬鹿が馬鹿やってるよ」と笑い飛ばして終わりでしょうし(ああ笑顔がリアルに想像できてますます腹が立つ)、しわ寄せがくるのは事務方とオケなんすが…

馬鹿な夢想はともかく、
当面、アンサンブルをインバルにしっかりトレーニングしてもらいたい気持ちです(トレーニングに関してはベルティーニが一番でしたが、インバルにもそろそろ成果を出してもらいたい)。
フルシャが飛び入りで来てくれないかな?そうなると「気分転換」という意味で確実に変わるんですけど。
柱になる指揮者が複数いるのは、こういうとき心強いです。

お目汚し、失しました。

「アンタール」は「シェエラザード」ほどではないけど好きな曲で楽しめました。数年前、三石精一さんの指揮で聴きましたが、他のオケもとり上げてくれないものかと思います。コンスタンチン・イワーノフのステレオ!録音が特に気に入っております。

下野さん、あるオケのメンバーに聞いたことですが、性格もとてもいいそうですね。指揮はとても丁寧ですが、少々、音楽がキッチリしすぎていないかなと感じます。

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