2019-07

4・22(金)山田和樹指揮日本フィルハーモニー交響楽団

  サントリーホール  7時

 インキネンに代って急遽客演に登場したのが、話題の若手・山田和樹。
 昨年のサイトウ・キネン・フェスティバル以来、メジャー・オケで聴く機会がなかったので、今回の代演はむしろ幸いだったか。
 ただ、人気の割には、客席があまり埋まっていなかったのは意外。いわゆる応援団がもう少し来るかと思っていたのだが・・・・。

 サイトウ・キネン・オーケストラで「ベト7」を聴いた時にも感じたことだが、この山田和樹という人、いまどきの若手には珍しくロマンティックな傾向の音楽を持っている指揮者のようである。

 1曲目のマーラーの「花の章」での嫋々たる耽美的な味については、多分こうなるだろうと予想していたタイプの演奏だ。
 が、次のモーツァルトの「クラリネット協奏曲」で、極度に柔らかく弦を響かせ、優麗なカンタービレを効かせたのには、なるほどやっぱりこれが山田和樹のスタイルなのか、と感嘆したり、複雑な思いになったり。
 まるで1960年代頃によく聴いたような、あるいは今日なら長老指揮者あたりがやるようなスタイルだが、とにかくそれが彼の美学であるからには、こちらもそれに正面から向き合う必要がある。

 第2部でのマーラーの「第4交響曲」は、曲想からして豊麗になるのは当然だが、それでも当節の演奏としては、かなり濃厚な表現のタイプに属するだろう。
 こういうタイプの指揮は、特にマーラーなどロマン派後期の作品において、最近の指揮者があまり持っていない耽美的なもの、官能的なものを注入してみせるといったように、面白い味を発揮しそうである(彼の指揮する大編成の弦でシェーンベルクの「浄夜」など聴いてみたいものだ)。

 いずれにせよ、今日の演奏では、山田和樹の非常に念入りに仕上げる指揮が強く印象づけられた。「4番」の第3楽章でのたっぷりと歌いこんだ表情しかり。また「クラリネット協奏曲」の第2楽章冒頭、主題が最初にオーケストラで繰り返される個所で、フルート2本のロマン的なハーモニー(第14小節)をちょっと浮き出させ、陶酔を呼び起こして見せるセンスしかり。

 何よりも日本フィルの弦をこれだけふんわりと響かせたのは――ふだんあまりそういう音を出さないオーケストラだけに――オーケストラを把握する彼の力量が既に並々ならぬものであることを示しているだろう。これは、昨年のサイトウ・キネン・オーケストラを指揮したコンサートでも感嘆させられたことだ。ユニークな若手が出てきたものである。

 ただその一方、今日の「4番」のような複雑な曲では、まだオケとの呼吸が合っていなかったのか、特に前半2楽章では手探り状態で、もどかしいほど起伏に乏しい演奏だったという印象は拭えない。漸くオーケストラの演奏の勢いが全開したのは、第3楽章の緊張から解放されたあとの、第4楽章に入ってからではなかろうか。

 今回に限らず日本フィルの2日連続の定期では、概して初日は少々手探り、本調子は2日目になって、というケースが多い。これでは、初日を聴きに来ているお客さんに対して申し訳ないだろう。

 補足するが、今日のソリスト2人に関しては、疑問が多い。「クラリネット協奏曲」のソロは、ただ几帳面に吹くだけではだめで、もっと表情豊かに生命感と躍動感を持って音楽を歌い上げなければ、「コンチェルト」にならない。
 また「4番」のソプラノのソロは、オーケストラのテンポやリズムとのずれが夥しく、音楽がバラバラに聞こえるのには困った。愛想よく歌うだけでは、この曲のアイロニーを伝えるのには不足である。もっと研究を、と申し上げたい。

 ついでにもう一つ苦情を言えば、冒頭で事務局と楽員とが実情や決意についてスピーチをやったが、プレトークでもないのに13分間も喋るのは、チト長すぎた。新国立劇場の「ばらの騎士」のマチネーが6時15分に終ってから慌ててこちらに駆けつけた人は、赤坂の演奏が7時15分まで始まらないのなら、もう少し初台で拍手を続けていてもよかった、と思ったのでは?

コメント

このコンサート聴きに行った者です。おっしゃるとおりだと思いました。
このオケの1番吹きとしては頑張ったとは思いますが、ミスしてもよいからもっと積極的に表現して欲しかったです。なぜあれでブラボーがとぶのか理解しがたかったのですが日フィル会員にはブラボー屋がいるんですね。
最初のスピーチは全く要領を得ない心に響かないもので腹が立ちました。花の章が佳演だったので腹立ちも収まりましたが、あの無意味なブラボーと言い最低なスピーチと言い日フィルはまだ昔の体質を引きずっているのかと残念な気持ちになりました。演奏だけはコバ○ン体質から脱却しつつあるのにもったいないですね

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