2019-08

4・13(水)プラシド・ドミンゴ・コンサート・イン・ジャパン2011

   サントリーホール  7時

 ドミンゴもまた、こんな状況の中でよく来てくれた――と感謝されてしかるべき人だ。
 プログラム(冊子)には、「音楽を届けることで少しでも力になることができればと、日本に参ることにいたしました」というドミンゴのメッセージと、「ドミンゴ氏本人も義援金を寄付することを表明いたしました」と書かれた一葉が挟み込まれていた。このリサイタルは大震災の前から決まっていたものだから、「参ることにした」というのは、「予定通り訪日することにした」という意味であろう。

 協演は、ユージン・コーン指揮の日本フィル、それにアルゼンチン生れのソプラノ、ヴァージニア・トーラ。

 演奏曲目は大盛り。
 ドミンゴはソロで「トロヴァトーレ」「オテロ」「微笑みの国」「マリッツァ伯爵令嬢」「港の酒場女」からのアリアと「ウィーン、わが夢の街」を歌い、
 トーラは「エルナーニ」「オテロ」「メリー・ウィドウ」「ジュディッタ」「ラバビエスの理髪師」からのアリアを歌い、
 かつ2人で「シモン・ボッカネグラ」「リゴレット」「メリー・ウィドウ」からの二重唱を歌った。

 またオーケストラ単独の曲目としては、「シチリア島の夕べの祈り」序曲、「オテロ」のバレエ音楽(後半)、「詩人と農夫」序曲(途中から)が演奏された。

 メイン・プログラムが終了した時には既に9時15分になっていたが、更にアンコールとして、2人がデュオで「友人フリッツ」「あなたが私を好きになる日」「ふるさと」を歌ったほか、ドミンゴが「ベサメ・ムーチョ」を、トーラが「君と遠くに」を歌った。
 私はここまで聴いて失礼したが、あとから聞くと、そのあとにもう一つ「グラナダ」が歌われたとのこと。終演はおそらく10時頃になったであろう。

 ドミンゴは、今年70歳だ。とにもかくにも、あれだけ朗々と安定して歌えるというのは、もう驚異的というほかはない。声を巧くコントロールしているのは確かだが、しかしやはり昔ながらのドミンゴなのである。
 声は少し太くなり、今日はバリトンのレパートリーも多かった。「トロヴァトーレ」から歌われたのは、マンリーコのアリアでなく、ルーナ伯爵のアリアだったし、「リゴレット」から歌われたのも、マントヴァ公爵とジルダの二重唱ではなく、リゴレットとジルダの二重唱であった。

 しかし、「オテロ」では、最後の「オテロの死」の場面が歌われた――ここでの声は、まさにテノールの、何十年もわれわれが馴染んでいた、あの英雄的なドミンゴそのものだったのである。
 たとえ一部分でもドミンゴのオテロを日本で聴けるのは、もしかしたらこれが最後になるのかもしれないのだ――と思うと、何か胸にこみ上げるものを抑え切れない。ドミンゴの圧倒的な舞台には、これまでいくつ接したか数え切れないほどだが、今日ほど彼が素晴らしく思えたことはなく、これからも、いつまでも健在で歌い続けて下さい――と願ってやまない気持に駆られたのであった。
 今回は調子も良かったようで、つい先日ビューイングで観たばかりの「タウリスのイフィゲニア」でのオレスト役などとは、もちろん比較にならない(あの時は風邪気味だったそうだが)。

 協演したヴァージア・トーラも、声も容姿も、なかなか好い。まだ若い人で、輝かしく美しい声と、舞台映えする存在感を備えている。細かいテクニックやニュアンスはこれからだろうが、楽しみなソプラノだ。
 当初予定されていたアナ・マリア・マルティネスの代役として来日したという。しかしこのトーラも、これまでにも世界各地でドミンゴとのコンサート協演を重ねているのだそうである。

 指揮者とオーケストラに関しては、もう少し何とかならんのか、としか言いようがない。リズムは重いし、反応は鈍いし、アンサンブルは乱れる、終了和音の最後が合わない、など、歌い手の足を引っ張ること夥しい。オケのほうはいかに普段オペラを演奏したことがないとはいえ、あれではあまりにお粗末過ぎる。辛うじて良かったのは、「オテロ」のデズデーモナの「アヴェ・マリア」における柔らかい響きくらいのものか。

コメント

先日テレビでちょこっとドミンゴ氏の演奏会風景が紹介されていました。到来そのものが夢を与えてくれる、さすがはスーパースターだニャ。猫もそうありたいもんニャりね。まずは爪でも磨くとするかニャ。それで、モンスターになる?(スター違いじゃね・・・)せっかくなのにグラナダまでお聴きにならずに、残念でしたニャあ・・・

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