2017-11

3・23(水)METライブビューイング グルック:「タウリスのイフィゲニア」

   東劇(銀座) 7時

 「タウリスのイフィゲニア(トーリドのイフィジェニー)」は、本当に素晴らしい曲である。私は1960年代にプレートルがパリ音楽院管弦楽団を指揮した抜粋のレコードを聴いて以来、この曲の熱烈な支持者になっているのだが、――映画のせいもあるのだろうが、このところの気の重い状況では、やはり100%精神を集中して没頭できるというわけには行かない。

 しかし、悲劇的、英雄的な性格を備えたオペラの音楽として、これは古今屈指のものではなかろうか。嵐のような激しさで押して行く音楽の劇的な迫力という点においても、ベートーヴェンのそれに匹敵する物凄さがある。
 今回のパトリック・サマーズの指揮はやや温厚端整だが、METのオーケストラが実に巧いので、グルックの音楽のこの見事な特徴が発揮されるには充分であったろう。

 上映されたのは2月26日のMET上演ライヴ映像で、スティーヴン・ワズワースの演出。
 アガメムノン王の娘イフィゲニアにスーザン・グラハム、その弟オレストにプラシド・ドミンゴ、彼の親友ピラードにポール・グローヴス、スキタイ人の長トーアにゴードン・ホーキンズ、その他。

 一般にはバリトンが歌うオレスト役をドミンゴが歌っているため、主役の男声2人がテノールということになったが、実際に聴いてみるとさほどの違和感はない。
 ただしこの2人の歌い方には、古典オペラ的な切れ味のいいリズム感に少々欠けるところがあり、その点サマーズの指揮とチグハグになる部分が出る。ドミンゴはそれでも貫禄と雰囲気とで何とかサマにしてしまうから、さすがに巧妙だ。
 が、グローヴスの方は、オレストを救おうという決意を歌う劇的なアリアなどでは、リズムとテンポがオーケストラと合わずに流れてしまい、どうにも締まらない――とはいえ、これも雰囲気で纏めてしまう巧さはある。

 グラハムは、悲劇的な性格を巧みに出した表情豊かな歌唱で、グルックのオペラのヒロインとして異論のない存在を示していた。

 舞台は、厚い壁を境にして2つに分けられ、場面によってそのどちらかで演技が行なわれる仕組だったが、あれで両サイドの観客が本当に両方を観ることができたのかどうか・・・・。
 今回の進行役は、ナタリー・デセイ。

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