2020-04

11・18(日)ドレスデン・オペラ「ばらの騎士」初日

  神奈川県民ホール

 うれしいことに、ファビオ・ルイジ指揮のオーケストラは、先日のエトヴェシュ指揮の「タンホイザー」の時とは別の団体のような素晴らしい演奏を聴かせてくれた。
 別のオーケストラ? いや、これこそが本来のシュターツカペレ・ドレスデンだ。この間のは、一体何だったのか? 
 ともあれ、もしこれ以上の美しく瑞々しい響きを求めようとするなら、彼らの本拠地ドレスデンのゼンパー・オーパーへ出かけ、あの劇場の音響効果の中で聴くしかあるまい。第2幕でその実力は全開し、第3幕大詰の三重唱と二重唱でそれは最高潮に達した。唯一気になるとすれば、クラリネットがしばしば不思議に大きな音を出すものだ、ということ。

 先日のウェルザー=メストとチューリヒ歌劇場のそれと比較すると、オーケストラの表現力と音色に関しては、いずれもそれぞれの良さがあり、兄たり難く弟たり難し、というところか。
 歌手陣は今回やや小粒の印象を免れず、クルト・リドル(オックス男爵)、アンケ・ヴォンドゥンク(オクタヴィアン)、森麻季(ゾフィー)ら、いずれも声量が大きくないため、たっぷりと拡がるオーケストラに声が消されがちだったのは残念だが、それでもよくやっていたし、演技も充分だったと思う。
 アンネ・シュヴァンネヴィルムスも、元帥夫人として成功の域であろう。大詰の場面で、ファーニナルに「若い者はみなこうなのかね」と問われ、「ja, ja」と答える(というより、呟く)瞬間は元帥夫人の見せどころだが、そこでの彼女の目の動きには実に微妙で複雑な心理が表現されており、見事といってよかった。
 もっとも、そういうところはオペラグラスを活用しなければ判らない。私は双眼鏡を用意して、主役でも脇役でも、要所での微細な演技を観察する癖がある。だから、ただ突っ立って両手を拡げるだけの演技しかできない歌手を見ると、この上なく腹立たしい気持になる。その点、独墺系の歌手たちは、実に芝居が巧い。

 ウヴェ=エリック・ラウフェンベルクの演出は、微に入り細にわたり理詰めにできていて、かのミヒャエル・ハンペのそれを思い起こさせる緻密な舞台である。いわゆる「芝居」としての性格を完備した演出であって、私はこういうタイプは非常に好きだ。

 クリストフ・シュビーガーの舞台装置は、かなり写実的なものである。今年3月にドレスデンでシュトラウス・シリーズに入り浸った時にはスケジュールの都合で観られなかったこのプロダクションを今回初めて目にし、第1幕の舞台装置が以前に写真か何かで見たような光景に似ているなと訝ったが、ブックレットの岩下真好氏の文を読み、これがドレスデン初演時のアルフレート・ロラーの舞台スケッチをもとにしたものだと判って納得。旧い邸宅の中で近代の物語が展開するという仕組みで、面白い。ただし第2幕以降は少し別の設定になる。

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