2019-07

2・20(日)大植英次指揮大阪フィルハーモニー交響楽団
東京定期演奏会

   サントリーホール  2時

 このところ久しく聴く機会のなかった大植英次の指揮。――ひところ、テンポを猛烈に遅くしたり、曲のバランスを変えたりと、ユニーク路線を邁進(?)していたようにみえた大植だが、今日のショスタコーヴィチとブルックナーの「第9交響曲」を聴く範囲では、そういう時期も既に過ぎつつあるようだ。
 その代わり、登場した時や、カーテンコールにおける彼の一挙一動が、何故か異様に厳めしく、物々しくなっていた・・・・。

 嬉しい驚きは、オーケストラの充実である。
 大植が音楽監督に就任した直後の頃、大阪へ出向いてしばしば聴いたこのオーケストラの演奏は、明るい活気こそあったものの、暴れ馬のようなアンサンブルで、各パートのソロも粗いことが多かった。
 だが、今日の演奏を聴いてみると、その頃とはもう、別の団体かと思えるほど、格段の相違が生じている。特に今日の2曲で示された合奏のバランスの良さ、緻密な音の構築などは、数年前のこのオーケストラからはあまり聴かれなかった類いのものだろう。
 大阪フィルは、やはり関西オーケストラの雄と呼ばれるにふさわしい力量を備えているのだ、というのが、今日の演奏会を聴いて得られた印象である。

 もっとも本来、こういうサウンドは、大植がかつてミネソタ管弦楽団やハノーファー北ドイツ放送フィルでつくり上げたのと同じものではなかったか。その意味では、大植英次はこの8年に及ぶ共同作業を通じて、大阪フィルを彼の個性に合致させるのに成功した――と見ていいのかもしれない。

 ショスタコーヴィチの「9番」では、リズムは少し重く、全体に重厚な響きとなり、この作曲家のアイロニーと才気などは、かなりシリアスなものとして描かれたようだ。ファゴットをはじめ各パートのソロが冴えていて、すこぶる手応えのある演奏が繰り広げられたのは嬉しい。

 ブルックナーの「9番」は、Solemnis(荘厳)という喩えがぴったり来そうな演奏であった。特に両端楽章では遅めのテンポが採られていたが、これはあたかも祈りにも似た雰囲気を生み出していただろう。
 第2楽章を含め、ゲネラル・パウゼはいかなる演奏と比較しても非常に長く設定されていた。このあたりには、大植の近年の、いわゆる「凝りよう」がまだ色濃く残っていると感じられるのだが如何。
 ただし、疑問が一つ。第1楽章のコーダでテンポを極度に速める――アッチェルランドではなく、基本テンポとして設定された――のは、それまでの荘厳な趣きを一変させる結果を生んでしまうと思われ、個人的には共感しかねる。

 オーケストラのバランスは整っていたが、金管群がすべて舞台上手側に斜めに集結されていた所為か、2階席正面で聴いていると、時にはそれらの音色が弦の響きの中に包まれてしまうこともあった。だがこれは当然、大植の狙いでもあったのだろう。聴く位置によっては、全く異なった印象が得られたことだろうと思う。

 トランペットを除く金管の長い和音(2、3回揺れたのは惜しいが)とともに第3楽章が消えて行ったあとには、長い静寂が保たれた。好い演奏会だった。
 大植英次は、来年3月で大阪フィルの音楽監督としての任期を終える。となると、この両者が、再び東京定期公演を一緒に行なうことはあるのだろうか? 
 もし今日が最後の機会だったのなら、このブルックナーの「9番」は、告別を飾るにふさわしい見事な演奏だったと言われることになるだろう。
 

コメント

東条先生、お疲れ様です。
大植さんの舞台内外での「凝りよう」、そしてオケとの不協和音なども耳にしますが、大阪フィルは大植さんを手放すべきではなかったのではないか。今後、もっと大きな化学変化が(大植さん、大阪フィル、そして両者にとって)起こるのではないかと思わせるショスタコとブルックナーでした。
まあ、これだけは恋愛みたいなものですから、私たち外部の一リスナーには、あれこれ言う資格がないのかもしれませんが、大植さんの就任以来、それまでにはなかった至福のときを過ごさせてもらった者としては残念至極です。

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