2020-04

1・14(金)渡邊一正指揮東京フィルハーモニー交響楽団

   サントリーホール  7時

 大野和士までが頚椎の故障でダウン。
 わが国のエース指揮者2人が、それぞれ腰椎と頚椎の障害で、一時的にせよ戦列を離れるという事態。これはやはり大変なことである。

 今日の定期は、東京フィルの指揮者陣の一角を占める渡邊一正が代役を務めた。彼の指揮を久しぶりで聴いてみたかったし、望月京の新作も聴いてみたかったので、こちらも腰痛・足痛を堪えながらホールへ向かう。

 望月京の新作は、東京フィルの100周年記念として委嘱されたもので、題名を「むすび」という。握り飯のことではない。さまざまなものがひとつに結び合うという意味である。
 20分弱の長さの大編成の作品で、雅楽のイメージも織り込まれ、本来はなかなかの多彩な曲と思われる。

 本来は――などと書いたのは、今日の演奏を聴く限りでは、オーケストラの鳴り方が些か平板で、特に前半、同じ雰囲気が延々と続き、単調な印象を与えられたからだ。
 さよう、本来は、作曲者がプログラム・ノートの中で「・・・・弦楽器の響きは、異なるシステムによって展開してゆき、さらに、ご祝儀舞である寿獅子の引用など、さまざまに生起する別次元の音楽層が同じ空間のなかで結ばれることによって・・・・」と書いているとおり、もっと色彩が多様に変化するはずの曲ではなかったのだろうか。

 たとえば木管群が舞のリズムで加わって来るところなど、あたかも地平線の彼方から踊りの集団が浮き出て、次第に近づいて来るようなイメージの演奏になっていたらどうだったか? 
 そして打楽器が多彩な音程を持った鼓として入って来る個所でも、弦を含めた管弦楽全体の響きはさらに明るく変化して行くはずではなかったのか? 
 私はたった1回しか聴いていないから、これらは、あくまで想像でしかない。
 だが、ただ几帳面にイン・テンポで音をなぞるような演奏でなく、もっと心からの共感を以って演奏されれば、さらにめくるめくような美しい作品として楽しめたのではあるまいか――と、非常にもどかしい思いで聴いていたことは事実である。

 これは、オーケストラのせいではなく、やはり指揮者の責任になるだろう。
 早い話、その他のプログラム――ショスタコーヴィチの「第6交響曲」と、プロコフィエフの「第5交響曲」でも、あまりにイン・テンポで、あまりに淡々と指揮されるので、私は些か呆気に取られた。音響こそ壮大だが、演奏に伸縮がなく、生きた躍動が全く感じられないのだ。
 プロコフィエフの後半では、その欠陥がどうしようもないほど露呈してしまった。第3楽章では、作曲者がそこにこめたはずのミステリアスな緊迫感も失われていた。さらに第4楽章の序奏に入った瞬間にも、何か新しいことが始まったというイメージが全然感じられない。ただ機械的に曲が流れて行くのみであった。
 したがって、すべてが単調極まりない演奏に終始してしまったのである。
 失礼な言い方で申し訳ないが、一体この人は、どういうつもりで指揮しているのだろうと思う。

 しかしこの2曲では、オーケストラの方は、それを補って、見事におのれの役割を果たしていた。あたかも、指揮者がだれであろうと自らの実力を発揮して見せよう、といわんばかりの演奏を繰り広げていた。
 コンサートマスターの荒井英治以下、今日はメンバーも「揃っていた」らしく、技術的にも破綻のない演奏を聴かせてくれた。厚みのある、ブリリアントで豪壮雄大な響きも魅力的だった。
 そこからあとをどうするかは、指揮者の領域に属するだろう。
 

コメント

私も伺いました

いつも楽しく拝見させていただいています。
私も同様に、渡辺氏の名曲コンサート的なものではない本格派においてどんな演奏を繰り広げてくれるのかに興味があり、足を運びました。
感想は、先生と同様でした。非常に器用な人でピアノも達者ですし、もったいない人だなあと感じています。一度古典派の曲を本気になって取り組んでもらえたらなあと思います。惜しい逸材と思います。

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