2020-05

11・12(月)ワレリー・ゲルギエフ指揮東京交響楽団

 ミューザ川崎シンフォニーホール

 ルイジとドレスデンの「復活」(サントリーホール)はまたいずれ聴く機会もあろうが、ゲルギエフと東響の顔合わせはもう聴けないだろうから、と勝手に決め込んで、こちらに来た。
 ゲルギエフの日本デビューは1984年10月6日、「日ソ音楽家協会設立記念演奏会」でフレンニコフのお供といった立場での指揮だったが、その時に振ったオーケストラが、この東響だった(私は聴いていない)。それ以来、実に23年ぶりの協演ということになるわけで、チェスキーナ女史の口利きで実現したものだそうな。リハーサルも、今回はかなり念入りに行なった由。もっとも、それ以前にスダーンが下振りして準備を整えておいたそうだ。別に悪いことではないだろう。

 プログラムは「ジュピター」と「幻想」。いずれもロシアものでないところが面白い。ゲルギエフ自身の提案で組まれた曲目だそうで、彼としては自らの幅広いレパートリーを示したい意気だったのであろう。
 前者は実にきっちりと整然と、ていねいにまとめられた演奏である。非常に濃密な分厚い音づくりで、第4楽章後半にかけてますます激しく突き進むエネルギーを放出していくところなどが、ゲルギエフらしい特色といえるだろうか。その勢いに煽られてか、フガートの個所などでは若干音色の混濁が聞かれたが、第1楽章展開部でヴィオラ・チェロ・コントラバスがヴァイオリン群を1小節あるいは半小節遅れて追走する声部の動きなどは実に明晰で、東響の弦の好調さを物語るかのようであった。

 「幻想」は、流石に轟くような、豪壮な演奏で、満席に近い会場を沸き立たせた。しかしその一方、合奏の緻密さも見事なもので、特に第1楽章で、弦楽器群が細かいデュナミークの変化を加えながら何度も駆け上がり、駆け下りるくだりなど、演奏が正確に行われればそれだけでベルリオーズの音楽の並外れた魔性が充分に再現されるのだということを如実に証明して見せたと言えるだろう。第1楽章の序奏でも、これだけきっちりと精妙に、しかも緊迫感を保持した演奏は他にそう多く例を見ない。以下の4つの楽章にも共通したことだが、アクセントの強烈さもゲルギエフならではのものであった

 今回聞いたのは3階席正面2列目。音をバランスよく聴くにはいい位置だったが、とにかくこのホールの空間は広い。オルガン横の最上階席の人の姿など、雲煙万里の彼方といった雰囲気だが、音響も何か拡散した印象になってしまう。オケがいかに「悪魔の祝日の夜の夢」で咆哮しても、まだホールには隙間があるように思えて、少しもどかしい気持になってしまうのである。
音楽の友08年新年号公演レポート

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