2019-05

11・27(土)ユベール・スダーン指揮東京交響楽団のブルックナー「8番」

  サントリーホール  6時

 坐骨神経痛持ちの身でダブルヘッダーのコンサート通いはためにならぬ――とご忠告下さったTTさんには叱られそうなことを、またやってしまう。みなとみらいホールでの公演が終った後、クルマでサントリーホールへ移動(歩くのは無理だが、運転には支障はない)。
 秋の国内オケ「ブル8」4連発は、やはり聴いておきたい演奏会である。当初のスケジュールでは、今週はパリでティーレマンとウィーン・フィルのベートーヴェン・ツィクルスを聴いているはずだったのだが、体調危険と見て1週間前にドタキャンしたため、幸いに今日のコンサートを聴けるようになった、というわけだ。
 正直、サントリーホールに着いた頃には、痛みのせいで疲労困憊の状態。が、そこが音楽の素晴らしい力というべきか、スダーンと東響の圧倒的な「8番」を聴いている間だけは痛みを忘れ、元気を取り戻すことができる。

 前半にショパンの「ピアノ協奏曲第2番」が、ダン・タイ・ソンをソリストに迎えて演奏された。この人のピアノも、何か不思議な安堵と懐かしさを感じさせるようになった。これも時代の流れというものか。
 今回の演奏会タイトルが「ショパン生誕200年」となっているので、字ヅラの上ではまるで「ブル8」が付け足しみたいに見え、笑いを誘う。

 それにしても、今日のプログラムは、戦艦と巡洋艦が一緒に来たようなもの。「ブル8」の前にこんな量感のある曲を置いたプログラムは、珍しいだろう(誰だったか以前、似たことをやった人がいたような気がするが・・・・)。
 それでも、休憩20分を挟んで8時15分には終演となったのだから、2曲とも比較的テンポの速い演奏だったという証明だろう。

 「第8交響曲」は、今回はノーヴァク版(もちろん第2稿)での演奏だ。
 この定期に先立ち、スダーンと東響は川崎で、セッション・レコーディングを2日間にわたり行なっていた。そこでみっちり仕上げをしたためもあろう、東響の演奏は、冒頭から自信満々という雰囲気を漲らせており、持てる力を余すところなく発揮したような感があった。
 オーケストラのバランスも完璧で、破綻は皆無と言っていいほどである。

 スダーンの完璧主義はここでもいよいよ徹底していて、息も詰まるような緊迫感が全曲を覆う。彼の指揮は、長い旋律線をねっとりと絡み合わせるというタイプとは逆であり、むしろクールなほどに主題を組合わせ、積み上げ、たたみかけ、追い上げて行くといったスタイルだが、それがかように一点の隙なく行われると、ブルックナーの音楽が持つ構築的な要素が絶妙に浮かび上がって来る。

 第1楽章終結部や第2楽章のスケルツォでの演奏には、異様な気魄と昂揚が聴かれ、凄味さえ感じられた。
 特にスケルツォの後半、最後の追い込みにかかるフォルテ3つの個所での、ホルンとトロンボーンとコントラバステューバによる和音の量感がはっきりと響かせられた(ここはしばしば演奏が雑になる)ことは、ここの音楽が持つ魔性的な色合いを充分に描き出していたであろう。

 アダージョ楽章は、安息よりも緊張感に満たされている。第4楽章も、立ち止まることを許さぬ力に追い立てられるかのよう。
 だが、それらの演奏が全く慌しくならず、疎かにもならず、がっちりと組み立てられていたところに、最近のスダーンの強烈な制御力と、東響の充実振りが証明されているだろう。
 所謂「陶酔的」な演奏ではないが、迫力に呑まれるといったタイプの演奏であった。

 全曲最後の、終結和音にかぶらんばかりの早すぎるブラヴォーと拍手は、いかにも遺憾。ブルックナーの場合には、ホール内に響く残響が重要な要素なのに・・・・。 最近は改善されて来ていると思っていたのだが・・・・。 
 

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出かけたくても仕事で行けなかったT.T

すみません。また、書き込みます。
僕は、川崎公演のチケットを持っていました。
11月25日、東京フィルのモーツァルト後期交響曲3曲聴いていたとき、帰るとき雨でした。前回坐骨痛めたときの話。そのころの話です。仕事休む日を振り替えて日曜出勤でした。行けなくて残念です。

パリ行けなかったこと残念だったのでは。行かなかったこと、僕も正解だと思います。
布団か畳の上を足曲げたり、軽く寝ながら、今はできる運動(骨折しない程度)をやると意外に気持ちが良いです。痺れが落ち着いたら。急性期の痺れと慢性期の痺れ。対処も違います。お風呂も。

この神経痛、身体まで前かがみになるので、肩こりも始まるはずです。今は、処方箋あたっているでしょうが、薬にもコンサート中眠くなるものもあったはずです。
坐骨神経痛とパソコンに書き込みしていると、椅子に座っても猫背になるので、上半身にとって良くないです。そのうち膝まで据わっている最中に頭まで肩こりからくる頭痛で悪くなり、背骨にも負担がかかるので、やがて長いオペラも1曲もののコンサートそのものもつらくなってくるのは確実です。

仕事柄70代以上の方にも会う機会が、毎日あります。異口同音に<腰が痛い。膝が痛い。だから出たくない>。自分こそ大丈夫と思い込んだりしていた人ほど、本当に寂しい・哀しい思いしています。どうぞ、ご自愛ください。

ガツガツ行ったら、そのうち<やっぱりやめておこう>増えていきます。整形の先生に、仕事柄のことを伝えると丁寧に対応していただけるはずです。

音楽を聴いているときは、痛みを忘れられるとは、音楽麻酔ですね。でもそのあと大きなツケがまわってきますよ。お大事になさってください。
私は、井上道義/新日本フィルで経験あります。その時の前プロはバーンスタインの不安の時代(小曽根真ソロ)でした。ジャズファンの私は小曽根さん目当てで聴きにいきました。くたくたになりました。ブルックナーの後半、年配のお客さんの集中力も切れてきていたように覚えています。

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