2019-08

11・12(金)高関健指揮日本フィルのブルックナー「8番」

  サントリーホール  7時

 高関健が日本フィルの定期に登場するのは久しぶりではないかという気もする。
 オーケストラをまとめる巧さでは定評のある彼が、最近登り坂にあるとはいえまだ粗さの残るこのオケを振ったらどうなるか、その辺の興味をも呼び起こす客演ではあった。

 結果としては、ブルックナーの音楽の壮大な緻密さを十全に出すには未だし、という感ではあったが、ラザレフ就任以来まだ2年足らずの時期にあるこのオケのこと、そう一朝一夕には行くまい。
 しかし、先月の尾高忠明の客演といい、今月の高関健といい(何だか札響みたいだ)緻密な音楽をつくってくれる指揮者を客演に招くという路線は好ましいのではないかと思われる。

 さて、高関の「ブル8」。
 彼は全曲を基本的にイン・テンポ――それもかなり遅めのテンポで――で押した。この考え方には、私も共感する。「ブルックナーの音楽を指揮する時には、テンポを途中であれこれ動かしてはいけません」と言ったのは、往年の巨匠カール・シューリヒトだったか。

 しかし、高関のこの「ブル8」は、むしろ彼の恩師カラヤンの強い影響を感じさせるのではないかと思う――それも1957年録音のベルリン・フィルとの旧盤での演奏を、である。
 特に第4楽章ではそれが顕著だ。指揮者によってはしばしば猛烈な加速が試みられるハース版【N】の個所やコーダなどで、高関はカラヤン同様、急がずにじっくりとイン・テンポで音楽を高揚させて行く。この手法も、私は好きだ。
 【N】など、ここをぶっ飛ばしたら、ブルックナーの高貴さ、雄大さ、デモーニッシュな迫力などが台無しになり、ただの狂乱状態になってしまうからである。とりわけハース版においては、そのあとの【O】の美しいフレーズにうまく続かなくなるだろう。

 ただ、このイン・テンポ路線で厄介なのは、オーケストラによほどの重量感と持続力がないと、いくつかあるクライマックスを「高く、次はさらに高く」構築して行くのが非常に難しいことにあるだろう。今日の演奏で惜しかった点といえば、そこにあるのではないか。
 コーダの最終個所では、高関の丁寧な音づくりと、日本フィルの文字通り全力を揮った演奏とで、各楽章の主題群が同時に響きつつ交錯する模様は、非常にバランスよく立派に表出されていた。が、そこでのブルックナーの音楽が持つアルプス的な威容といったものを再現する点では、やはり今一つ物足りないものがあった、と告白せざるを得ないのである。

 日本フィルの演奏は、全体としては悪くはなかったものの、細かいところは相変わらずいろいろあった(一例としてティンパニはもう少し正確にたたいてもらいたい)し、最強奏での音色も芳しいとは言えなかった。在京オケ・ランクのAクラス常連となるためには、このあたりを早く整備することが肝要ではなかろうかと思う。

コメント

東条さんは新日フィルびいきで、日フィルをよく「粗い」といいますね。

日フィルについては、確かにその通りだと思いますが、新日フィルってそれほど上質ですか?いつ聴いても、巧くもなく、下手でもなく、なんとも評価しにくい演奏をします。一言で言えば「泥臭い」。朝比奈客演時代の印象のままです。たぶん東条さんは、「ねこまるのやつ、耳が悪いのか?」と思ってしまうでしょう。でも、仕方ないのです。もしかしたら、私はこのオケに偏見があるのかもしれませんね。多くのリスナーが特定のオケに対して持つ、あの打ち消しにくい偏見が。

「日本のオケ、巧くなったな」とナショナリズムに浸っていると、ウィーンやクリーヴランドが「侵入」して来て、滅多打ちにされます。毎年です。日本のオケ、もう少し何とかならんかなぁ・・・。

カラヤンのブルックナー。コロムビア盤(MONO)は、私見では最低です。あれをもっとパワーアップさせると、チェリビダッケになります。崩れたフレージング、丸いアタック、ロマン派風のフォルテ・・・私は堪えられませんね。「8番」は決して「トリスタン」ではないんですよ!あのリズムの死んだスケルツォを、人はナゼ酷評しないのか???カラヤンでしたら、音は悪いものの、デジタルのVPO盤を取ります。VPOの伝統美が、老い崩れたカラヤンを支えています。

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