2020-05

4・23(金)新国立劇場の新演出 ドニゼッティ:「愛の妙薬」

  新国立劇場  6時30分

 いつ頃からか知らないけれど、最近は新国立劇場でも、オペラの登場キャラクターの名に因んだ飲み物やらサンドウィッチ・セットを販売し、客を愉しませるようになっている。今回も「アディーナ・セット」とかいう軽食トレイのようなものが売られているのを見た。
 「愛の妙薬」に因んで、だれかの役柄の名のついたワインもあったようだ。ある上品な奥様がカウンターで「わたくしにはどの妙薬が効くかしら」と言いながら注文していた、という話を知人から聞いた。オペラ座での光景としては、いいものだ。だが、私はワインもシャンパンもウォツカも、味も香りも大好きなのにもかかわらず、体の方がそれらを一切受けつけない。従って、酒の話には、どうも興味がない。

 今度の「愛の妙薬 L'elisir d'amore」は、イタリア出身のチェーザレ・リエヴィ演出によるニュー・プロダクションだ。
 舞台美術はルイジ・ペレゴ、衣装担当はマリーナ・ルクサルド。シンプルだが、衣装を含めて非常にカラフルな舞台である。リアルな村の光景などは一切なく、「トリスタンとイゾルデ(トリスターノとイゾッタ)」の物語の「本」と、「Elisir」の字の形とをモティーフにした大道具・小道具が活用される。

 演技はイタリア・オペラものとしては比較的細密で、「お芝居」としても流れのいい舞台だろう。
 ただ、色男軍曹のベルコーレの部下の兵隊たちをコミカルなキャラにしたところや、インチキ薬売りのドゥルカマーラがプロペラ航空機の操縦士になって現われるところは――これら自体は面白いアイディアであることはたしかなのだが――そこだけ妙に浮き上がっているようにも感じられて、何か腑に落ちない。
 ラストシーンで、薬を売れるだけ売り捌いたドゥルカマーラが縄梯子につかまってブランブランしたままでいる場面など、いっそ梯子ごと空中に上って行くとか、第1幕で出た飛行機に飛び乗って逃げて行くとかすれば、最後のシャレがピリリと利いたのではないかと思うのだが如何。

 総じて、綺麗に仕上げられてはいるものの、沸騰する熱気のようなものがあまり感じられないというか、近年の新国立劇場としてはまあ平均的な水準の舞台――と言うところか。

 指揮は、これもイタリアのパオロ・オルミ。オーケストラ(東京フィル)の鳴らし方も巧い。「人知れぬ涙」の前奏のファゴットが如何にも哀愁たっぷりの雰囲気で演奏して見せたのは、秀逸だろう。ネモリーノとアディーナが愛を告白しあう瞬間のオーケストラの短いが雄弁な盛り上がりの演奏も、出色だった。

 ネモリーノはジョセフ・カレヤ。最初のうちは彼の独特のヴィブラートが気になったが、いわゆるヤサオトコでなく、大きな声(!)の、純朴で野暮ったい大男のネモリーノというのも面白い。
 アディーナのタチアナ・リスニックは容姿も声も細身だが、妙に図々しい女が最後に可憐な恋する女に変貌して行くあたりの表情は、なかなか良かった。
 ドゥルカマーラのブルーノ・デ・シモーネは、演技でも歌唱でも、さすがの芸達者。

 ベルコーレには与那城敬が出て健闘したが、前出の歌手たちの中で互角に渡り合って行くにはまだ経験不足は補えまい。格好良さではひけは取らない人のだから、早く他流試合を重ねてスターになって欲しいものである。
 良かったのは、いつものように新国立劇場の合唱団。特にこの1,2年というもの、充実は目を見張らされるものがある。

 終演は9時頃。イタリア・オペラは短くて楽だ――ワーグナーに比べると。

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