2020-05

4・18(日)ルドルフ・ブッフビンダー・ピアノ・リサイタル

   東京オペラシティコンサートホール 2時

 ベートーヴェンのピアノ・ソナタを3曲――「第10番ト長調作品14-2」と「熱情ソナタ」「ハンマークラヴィーア・ソナタ」。

 分厚い和声をたっぷりと響かせ、どっしりとした構築感を通じてベートーヴェンの音楽に巨大な風格を蘇らせるところ、いかにも独墺系のベテラン・ピアニストならではの個性である。こういうタイプの演奏を聴ける機会がだんだん少なくなって来ている当節、不思議な懐かしさに浸りながら時を過ごさせてもらった。

 もっとも、そう感じている一方で、この重々しい威厳のベートーヴェンから脱出し、もっと血の気の多い、鋭利なベートーヴェンへ転進したくなるという気持が、聴いている間にさえふっと頭をもたげて来るというのは、われながらまことに怪しからぬこと(??)ではある。「ハンマークラヴィーア・ソナタ」のさなかなど、終始その二つの感情の間を揺れ動いていたのが正直なところだ。

 その「ハンマークラヴィーア」では、第1楽章の途中でガシャッという妙な音が聞こえたあと、第2楽章に入る前に調律師が登場するという珍しい事件が勃発した。
 だからといって、ブッフビンダーほどの人であれば、この中断が第2楽章以降の演奏に影響を及ぼすなどということは、あるはずはない。
 それゆえ、4つの楽章が精神的な有機的繋がりを持つこのソナタで、第1楽章のあとでCDを停めて他の仕事をやり、そのあと第2楽章からまた聴き始めるなんてことがあったとしたら、とても気分が乗らないよなあ――などと連想するのは、悪いシャレであろう。

 アンコールでは、最初に「悲愴ソナタ」の第3楽章が弾かれた。
 そして次に出て来たのが、ブッフビンダー得意の、グリュンフェルドの「ウィーンのソワレ(夜会)」という小品。「こうもり」のワルツ他を使ったこの曲でブッフビンダーが聴かせた演奏の幻惑的な色気は、まさに独特のものだ。かくて、終り良ければすべて善し、である。

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