2020-05

4・2(金)高関健指揮 紀尾井シンフォニエッタ東京

   紀尾井ホール 7時

 紀尾井ホール開館15周年記念演奏会――は即ち、このホールをフランチャイズとする室内オーケストラ「紀尾井シンフォニエッタ東京」の15周年記念演奏会でもある。
 今回は高関健を客演指揮に、ソリストに天羽明恵(S)と田部京子(p)を迎え、J・シュトラウスの「春の声」、モーツァルトのピアノ協奏曲第26番「戴冠式」、マーラーの「交響曲第4番」、アンコールに同じくマーラーの「ラインの伝説」が演奏された。

 「紀尾井シンフォニエッタ東京」も、今日は客員奏者を大幅に入れ、メンバー数を増やしての特別な演奏。
 オリジナルの大編成管弦楽で演奏したマーラーの「4番」は――たとえ弦12型に落したとはいえ――このホールには果たして如何なものかという心配もあったが、そこはさすがに練達の高関健、オーケストラを極めてバランス良く響かせてくれた。少なくとも1階中央あたりの席(13列)で聴く限り、ほとんど違和感のないサウンドに感じられた。

 デュナーミクやアクセントなど、高関らしくスコアに即した綿密な神経を行き届かせた演奏だったこともあり、大ホールで豊麗な音響により演奏された時よりもむしろ、室内楽的な精緻さを作品に感じさせるという好ましい結果さえ生む。
 このような音で聴くと、第2楽章(スケルツォ)などには何か怪奇な雰囲気が浮かび上がり、それはあの「第7交響曲」の第2楽章あるいは第3楽章の楽想の先駆でもある――ということまで再確認させてくれることになる。

 第4楽章で「天上の生活」の歌に割って入る「鈴入り主題」が、夢を破るかのように噛み付くような鋭さで演奏されたのも面白い。
 こうして聴くと、この「第4交響曲」は、やはり決して天国的でも明るくもなく、中期のマーラー特有の、暗く皮肉な、悪魔的な音楽の一つなのだということが改めて感じられるのである。全曲の最後が妙に沈み込んで消え入るように終るというのも、その証拠の一つだ。

 こう言ってしまうと、15周年の祝賀音楽会の曲目としては少々具合が悪かろう(?)。もっとも、そんなことをウダウダ考えながら聴いていたのは、どうせ私くらいなものだろうから・・・・。

 「春の声」もソプラノ・ソロ入りの版で演奏され、大編成のオケをバックに天羽明恵が華麗な歌唱。彼女はマーラー2曲への出演と併せ、今夜は大活躍だった。「戴冠式」は、田部京子が極めて叙情的に美しく弾いてくれた。
 オーケストラは、マーラーだけ念入りに練習を重ねたような――という感じがないでもない。
 私の席の位置からは、舞台下手側にいるコントラバス(4本)の低域が舞台全体に共鳴しているように聞こえたが、このホールでは時々こういうことが起きる。

コメント

私も同日、13列で聴いていました。ただ東条様とはずいぶん異なる感想を抱きました。
高関氏がよくスコアを勉強されたリードをなさったことは十分感じ取れましたが、
マーラーならではの変転する曲想は、全体的な統一感の中に包摂されることなく、
切れ切れバラバラになっており、まったくラインが見えない、「歌わないマーラー」に
終わったいたように思います。対位法効果を考慮した対抗配置はアイディアだと
思いましたが、エキストラの多い今回の紀尾井は、音色やヴィジョンが共有されず、
各所から異質な響きがバラバラに発せられるばかり。
テンポと音量を細々と調整するマエストロのアプローチの結果、各団員は指示に
従うことだけに終始していて、パート相互で自発的にアンサンブルを練り上げるよう
とするモチベーションが感じられませんでした。結果、意味不明のマーラーになったと
思えてなりません。高関氏にとっては、研究結果の実現こそ最重要課題でしょうが、
それらが、内側から湧きあがるような、音楽的な表現につながっていないように思われます。
期待していただけに、大変残念なコンサートでした。

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