2017-10

2・27(土)28(日)パーセル:「アーサー王」

  神奈川県立音楽堂

 神奈川県立音楽堂の「バロック・オペラ」シリーズは、これが第4回。全部観て来たわけではないが、あの「バヤゼット」をはじめ、音楽的水準は非常に高く、それぞれの音楽の素晴らしさを堪能させてくれる。
 今回出演のエルヴェ・ニケ指揮ル・コンセール・スピリチュアル(管弦楽&合唱)も、一昨年の初来日公演のヘンデル・プロ以上に、文句のつけようがないくらい闊達で洗練された演奏を聴かせてくれた。ジョアン・フェルナンデス(バス)、アナ・マリア・ラビン(ソプラノ)ら5人のソロ歌手も、比較的安定した歌唱を披露。
 正味80分ほどにまとめられたこの作品と演奏は、最後まで聴き手を飽きさせない魅力をたっぷりと湛えていたのである。

 この人たちが昨年モンペリエ歌劇場で上演した舞台と演奏をDVDで観ると、演奏の巧さもさることながら、芝居の達者なことにはほとほと感心させられる。
 アーサー王役のジョアン・フェルナンデスなどなかなかの芝居巧者だし、まして指揮者ニケと来たら、学者みたいに生真面目な顔をしているくせに舞台へ上って歌ったり踊ったり、そこらのコメディアンも顔負けの役者ぶりなのである。

 今回のホール上演では、ほとんど演奏会形式上演に等しい舞台構成のため、残念ながらそれらは見られない。唯一、終り近くの酒宴の場で、歌手たちが「酔って」歌い、楽員たちも勝手に「祝杯を上げる」光景があったが、片鱗はその程度だろう。
 ニケもその時、コップを持ってウロウロして見せていたけれども、舞台前方が暗かったため、折角の彼の芝居も観客には印象づけられなかったようだ。

 演出は、このシリーズをずっと担当している伊藤隆浩。
 どこに「演出」らしきものがあるのか首をひねらされるような舞台で、動きとしてはまあ歌手とダンサー(東京シティ・バレエ団)の出入りの整理程度――といったところだろう。プレ・トークで演出家は、「音楽の邪魔をしないように心がけた」という意味のことを語っていたが、それはどうも言い訳がましく聞こえる。

 舞台中央上方にスクリーンを設置し、そこに多少の象徴的映像を投影するのはともかく、日本の時事風刺などを映写するのは、どうもサマにならない。
 それ自体がいけないというのではない。もともとニケの選曲構成が原曲と異なってストーリイ性の不足する形になっている上に、歌手たちが平服で、演技もほとんどない形で歌い、「アーサー王の話はどこへいったの?」と思いたくなるくらい物語本体から離れる舞台進行になっているのだから、そこへ消費税アップを皮肉るキーワードを映したところで、木に竹を接いだようなものになるのがせいぜいだ、と言っているのである。

 結局、今回も、音楽と演奏がすべてであった。舞台に動きがないだけ、音楽そのものにじっくりと集中できる。2日間観たうちでは、初日の方が演奏のノリもずっと良かったようだ。
 これは、神奈川県立音楽堂開館55周年記念行事の一環。

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