2020-05

12・23(水)ウィーン第4日 ヴェルディ:「運命の力」

   ウィーン国立歌劇場

 デイヴィッド・パウントニー演出のプロダクションだが、既にルーティン公演化している様子。
 舞台全体に一種のタガの緩んだ雰囲気を感じさせる。

 その上、この19日にハウス・デビューを行ったという2人の主役歌手――ドン・カルロ役のマルコ・ディ・フェリーチェおよびドン・アルヴァーロ役のフランチェスコ・ホンが、いずれも声は大変いいのだけれども、演技は「棒立ち・手拡げ」で、視覚的にもドラマとしての緊迫感がないのだ。
 特に後者、韓国のソウル生まれでイタリアに学んだというホンは、終始――重傷を負ってベッドに伏している時だろうと、決闘している時だろうと――客席を向いて両手を拡げるか片手を差し延べて歌うという有様である。こういうのを見ていると、イライラを通り越して腹が立って来る。
 どこでオペラを学んだのか、今回誰も彼に演技を教えなかったのか。

 これならいっそ、たとえ視覚的に煩わしくても、人間が生きているムジークテアター系の演出の方がどれだけマシか、とさえ思ってしまう。

 終幕では、カルロが舞台上で妹レオノーラを射殺し、息絶える。兄の死体に覆いかぶさって息を引き取る彼女を、グァルディアーノ神父とともに悼んでいたアルヴァーロは、やがて独り背景にとぼとぼと歩み去る。彼があたかも自殺へ向かうかのような演出だが、これは初版のイメージを折り込んだものだろう。もっとも、ホンの演技がなっていないから、寂寥感など全く出ないが。

 指揮はパウロ・カリニャーニ。序曲(シンフォニア)から音符やフレーズの細部に精妙なアクセントを施し、オーケストラのバランスを巧みに制御しつつ、なかなか神経の行き届いた指揮を聴かせていた。
 この人のオーケストラ・コンサートはこれまでにも何度か聴いているが、オペラを聴いたのは今回が最初だったような気がする。演奏にも起伏があって、かなり聴き応えがあった。

 しかし、オーケストラそのものの演奏水準はあまり芳しくない。このところ何シーズンか、たった数個ずつの公演ではあるが聴いて来た印象に過ぎないけれども、ウィーン国立歌劇場管弦楽団のレベルは、かなり低下しているのではなかろうか?

 主役2人は、演技こそお粗末だが、しかし声は若々しく素晴しく、特にホンの良く伸びる高音域は痛快なほどである。まともに演技を勉強すれば、屈指のテノールになれるだろう。アリアの後の拍手は、彼に対してのものが一番長かった。
 レオノーラはニーナ・ステンメ。細かいニュアンスに富んだ歌唱で、私は結構気に入ったのだが、何故か拍手があまり来ない。

 もっとも、これらの歌手のいずれも、グァルディアーノ神父役のフェルッチョ・フルラネットの歌唱――ヴェルディのオーケストラにぴたりと乗り、ぴたりとはまる、完全無欠といってもいいほどの歌唱の前には、やはりまだまだ異質の感を免れないだろう。
 歌手では他に、メリトーネ神父を歌ったソリン・コリバンも良かった。
 プレツィオシルラを歌ったナディア・クラステーヴァは、西部劇のカラミティ・ジェーンばりの、ピストルを腰に帯びたいでたち。短パンとブーツにスラリとした足がカッコよかったが、肝心の歌はそれほど上手くない。「戦争讃歌」を歌う場面では、自ら左腕を負傷した姿で無理して歌ってみせるという演出が施されていたが、今どきとしてはまあ手頃な解釈だろう。

 カーテンコールでの拍手とブラヴォーは、ホンへのそれが随一。しかしたった一人、私の後ろでブーを飛ばしていたのがいた。演技に対してなのか、それとも人種的偏見なのかは判らない。

 7時開演で、第2幕の後に休憩1回、10時終演。
 かなり暖かくなった。市内の雪もほぼ消えたようである。

コメント

運命の力を観て

小生27/dez/2009を観ました LeonoraがStemmeの代役でMichele Criderとなり、声が細く音楽も平板で全くいただけませんでした それでも最近の天井桟敷はブラボーで、wienの観客も落ちたものです 舞台装置は視覚的には美しいのですが宗教的な表現に欠けており 神父が背広ではいただけません
最近のヨーロッパの演出家の無定見さと、声楽家、オケの質の低下を腹立たしく思うパーホーマンスでした

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