2020-05

12・6(日)飯森範親指揮東京交響楽団
ヤナーチェク:歌劇「ブロウチェク氏の旅行」セミ・ステージ上演

   サントリーホール

 愉快な家主の、月世界旅行(第1部)と、中世フス戦争時代へのタイム・スリップ(第2部)。酔って見た夢の話のような、あるいはホラ吹き男爵譚に似た話のような、荒唐無稽の物語。中世のプラハの街に紛れ込んだブロウチェクが、突然現われたフス教徒の軍人に怪しまれて脅かされるあたり、笑いを抑えきれない。

 飯森範親と東京交響楽団の力演・快演。
 予想をはるかに上回る演奏だ。

 先月22日、山形から帰京する際、たまたま飯森範親と同じ新幹線に乗り合わせたが、彼は車中ずっとスコアを携え、ヘッドフォンをかけたままで、このオペラの上演の準備に没頭していた。
 それはもちろん、彼にとっては、珍しくはないことなのだろう。だが、彼がそのように情熱的に打ち込んでいた作品の上演が、このように見事な成功を収めたことを喜びたい。
 東京交響楽団も、経営的に苦しい自主運営オーケストラでありながら、かくも意欲的な企画をよくぞ成功させたと思う。

 演奏も充実したものであった。音色の美しさもさることながら、弦楽器の響きなどには、まさに私たちが聴き慣れているヤナーチェク独特のそれが満ち溢れていたのには感心した。このオペラはこんなにもきれいな音楽だったのか――と、聴き手をして再認識させることは、すなわちその演奏が優れている証拠なのだ。
 コンサートマスターは高木和弘。彼の功績も、大きなものがある。

 東京響のこれまでのシリーズと同様に、セミ・ステージ形式の上演。そして演出も、これまでのヤナーチェク・オペラシリーズと同じように、マルティン・オタヴァが担当していた。わずかな小道具だけを使った簡素なものだが、内容は充分に理解できる。

 歌手陣は主役たちがチェコ勢、脇役たちが日本勢。
 ブロウチェクを歌ったヤン・ヴァツィークは、先年出たビェロフラーヴェク指揮のDGG盤でも同役を歌っていた人だが、威張りまくるが憎めない、そそっかしい法螺吹きの家主といった雰囲気の主役を、これ以上はないくらいすばらしく演じていた。
 他にも、マリア・ハーン、ズデニェク・プレフら、同CDでも歌っていた歌手たちが参加していた。またヤロミール・ノボトニー、ロマン・ヴォルツェル、イジー・クビークといった、よく名を聞く人たちも加わっていた。
 日本勢では、高橋淳と羽山晃生が、本場勢を向うに回して一歩も退かず歌った。P席に配置された東響コーラスは、いつものように暗譜。これも立派である。
 

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12月6日は「リナルド」を聴きました。

12月6日は、開演時間は少し違うものの「ブロウチェク氏の旅行」「リナルド」「マリインスキー歌劇場管弦楽団所沢公演」が重なり私にとっては選択が難しいところでした。

マリインスキー歌劇場管弦楽団公演は演目が平凡なためまずドロップ。
次に「ブロウチェク氏」は夜の公演なのでこれも夜行か名古屋泊で広島に帰って翌朝仕事をするのは難しいと判断してドロップ。結果として「リナルド」を聴きました。

何年か前にインスブルックで聴いた(観た)「リナルド」は衝撃的だったので、今回の公演をぜひ、聴こうと思ったということもあります。しかし、東条さんの「ブロウチェク氏の旅行」の評論を拝見すると無理してでもそちらにすべきだったかと思いました。会場にいない者にも活き活きと雰囲気が伝わって来ました。もっとも、日曜日の夜の1回のみの公演は地方生活者にはどちらにしてもかなり無理があるのですが。

さて、「リナルド」です。演奏も良く歌手も皆好演しましたが、まじめ一辺倒だなあという感じ。ゆとりがない…と言うのか。この作品は突飛な演出があって初めて面白いオペラかも知れないと感じました。演奏会形式では充分魅力が出ないのかも知れません。

インスブルックで聴いた時の指揮者はルネ・ヤーコブス。とってもわくわくする公演でした。それがヤーコブスのリードによる演奏のせいだったのか、突飛でチャチなふざけた演出のせいだったのかは今正確に思い出して判断は出来ませんが、ヤーコブスは鍵盤楽器全てを弾いて弾き振りだったとの記憶です。今回の鈴木雅明さんはレチタティーヴォの時のチェンバロ演奏のみで、それ以外は指揮に集中。その違いもあるかという感じがします。
当時の公演のリナルドはヴィヴィカ・ジュノーでとても魅力的でした(今回のリナルドは二枚目のカウンター・テナーのティム・ミード。こちらもとても良かったです)。森麻季の細く透明感のある声はアルミレーナ役に合っていて良かったと思います。アレミーダ役のレイチェル・ニコルズは鈴木雅明さんの公演によく出ていてお気に入りの歌手のようですし、またこの作品の要ではありますが、私個人としてはちょっと好きになれないかなとの印象でした(他の人の声がバランス良いレベルなのに1人だけ声が大き過ぎ。ヒステリックな役ではありますが、ちょっとヒステリック過ぎのような気がします)。
小さい役(キリスト教徒の魔法使い)ですが、上杉清仁というカウンター・テナーがなかなか良かったです。

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