2020-07

11・23(月)東京二期会/日生劇場共催公演
 R・シュトラウス「カプリッチョ」

   日生劇場(マチネー)

 東京二期会、近年の秀作の一つ。

 最初に、沼尻竜典の指揮を讃えたい。このところ「ばらの騎士」や「サロメ」など、R・シュトラウスもので連続ヒットを飛ばしている彼だが、この「カプリッチョ」でも成功を収めた。
 極めて叙情味が強く、室内楽的な精緻さを備え、かつ洗練された味を持つこの音楽を巧く再現するのは、ある意味では前2作よりも難しいといえるかもしれない。だが沼尻が、東京二期会のR・シュトラウス路線の中核だった故・若杉弘のあとを継いで――ちょうどびわ湖ホールのオペラ路線を引き継いだのと同じように――それを成功させたことは、大いに喜ばしい。
 オーケストラは東京シティ・フィルで、もう少し器用さと洒落っ気があったらとは思うけれども、まあ当面はこれが精一杯であろう。

 演出と舞台装置は、ジョエル・ローウェルス。
 舞台を、このオペラが作曲された時代の第2次世界大戦の最中のパリに設定した。同じコンセプトで評判が高かったというザルツブルク音楽祭でのヨハネス・シャーフの演出を私は見ていないが、このローウェルス演出による大詰めも、なかなか気の利いたものだと思う。
 この演出では、サロンも、そこに集まっていた人々も、ナチスの軍隊によって蹂躙される。オリジナルで終幕近く登場する給仕たちと執事長(家令)は、ナチスの兵士たちとその隊長に読み替えられた。「月光の音楽」を含む最後の場面は、年月を経て荒廃したサロンに訪れた、今は年老いた伯爵令嬢マドレーヌが往時を回顧するという設定になる。ここは、音楽の美しさとともに寂寥感が舞台を覆って感動的である。

 言葉か、音楽か、オペラで主導権を握るのはどちらか――という昔からの命題を延々と議論するのがこのオペラの内容というわけで、歴史上その争いの嚆矢となったグルックとピッチーニのオペラの音楽が第1場で引用されるのも面白い。
 第9場の「争いの8重唱」などはロッシーニのオペラにおける「混乱の重唱」のパロディそのものだが、今回はローウェルスがまさにジョークたっぷりに、巧みに演出してくれた。

 歌手陣が揃って好調。伯爵令嬢マドレーヌを演じた釜洞祐子の巧みさは、ラストシーンの老女役で存分に発揮された。
 劇場支配人ラ・ロシュ役の山下浩司の迫力、タカラヅカ的な扮装の女優クレロン役の谷口睦美の気障ぶりをはじめ、演技の上でも秀逸な光景がいくつも見られる。
 伯爵に成田博之、作曲家フラマンに児玉和弘、詩人オリヴィエに友清崇、歌手に高橋知子と村上公太、執事長に小田川哲也、プロンプターに森田有生。

 2日前に尼崎で観た関西二期会の「フィデリオ」での石器時代的舞台に打ち拉がれたあとでは、すばらしい目の保養になった。

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