2020-07

11・7(土)ユベール・スダーン指揮東京交響楽団
 シューマンとブラームス

   サントリーホール

 スダーン&東響、充実の演奏会。このコンビは、特にここ2、3年、最高の水準にある。

 マーラー編曲版によるシューマンの交響曲シリーズ。今日の第3回は「交響曲第2番」。
 冒頭からして、オリジナルと異なった響きがする。全曲、よくまあこれだけオーケストレーションに手を加えたものだと感心したり、呆れたり。その手法は実に巧妙だ。
 しかし、聴いていると、何か落ち着かない。初めからマーラーの作品だと思って聴いていればいいのかもしれないが、やはりこちらの頭の中には、シューマンのオリジナルがある。結局、以前にも感じたことだが、所詮マーラーは、やらなくてもいいような、余計なことをやってくれたのではないかな――という思いが最後まで抜けきれないのである。

 だがひるがえって言えばこれは、スダーンと東響の演奏が、それだけ迫真力があったことを証明するものだろう。閃くフォルティシモ、細かく精妙なクレッシェンドとデクレッシェンドなど、いつものようにスコアの細部にまで綿密に気を配った演奏は、見事というほかはない。
 第1楽章や第4楽章のコーダにおける熱狂的な昂揚感――これこそシューマンというよりむしろマーラーのものだろう――は、スダーンがこれまで聴かせたことがなかったほど、壮絶なものであった。

 この「2番」に、精神病者の症候を感じ取り、それを演奏に再現したのが、故ジュゼッペ・シノーポリだった。彼の指揮による第2楽章――特にそのコーダの部分における痙攣的なテンポの加速は、まさにそれを反映したものだったのだろう。
 スダーンが、それを意識して指揮したとは思えない。が、今夜演奏された第2楽章のコーダは、何かそれに共通するものを持った、激しい演奏だった。スダーンもまた、無意識的にシューマンの病む精神を読み解いたのだろうか。
 そしてマーラーのオーケストレーションが、その狂気性をより強めているような気もする。

 プログラムの前半におかれた、ブラームスの「ピアノ協奏曲第1番」――これがまた今日は、襟を正したくなるほどの立派な演奏だった。ゲルハルト・オピッツのヒューマンな温かさにあふれた、しかも揺るぎのない風格に満ちたソロは、まさに良きドイツ魂ここにあり、という演奏といえよう。
 そしてさらに、スダーンが東響から引き出す緻密でしっとりとした、しかも強固な構築性を備えた音楽の素晴らしさは、比類ない。

 アンコールは、コンマスの高木和弘がソロを弾くシューマンの「トロイメライ」。編曲はテオ・モーゼズという人だとか。何となくマントヴァーニ的雰囲気のトロイメライ。

 このところ、疲れも吹き飛ぶ素敵なコンサートが続く。

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