2020-04

9・27(日)札幌室内歌劇場 オルフ:オペラ「月」

    札幌サンプラザコンサートホール (マチネー)

 前日のANA最終便(22時15分着)で新千歳空港に入り、ホテルコムズ(旧三井アーバン)に投宿。このホテルは空港建物の一角にあり、窓からは滑走路が見えるし、部屋も結構広い。最終便で着いた時や、翌朝一番で発つ時は至極便利だ。
 今回は、芸術文化振興基金助成金交付関連の調査を兼ねる。

 札幌室内歌劇場(1990年設立)の第38回公演。オルフのオペラ「Der Mond(月)」が、「月を盗んだ話」という題名により、日本語訳で上演される。
 プレトークは芸術監督の岩河智子が行なったが、明快で解りやすい解説であった。プログラムには記載されていないが、別の資料によると、編曲は彼女によるものの由。楽器編成もヴァイオリン、チェロ、フルート(ピッコロ持ち替え)、ピアノ、キーボード(電子楽器)各1となり、曲の形にも手が加えられているが、このような珍しいオペラを手っ取り早く愉しむための手段としては悪くはない試みであろう。
 指揮は柳澤寿男、演出は中津邦仁。

 いかにも手づくりといったプロダクションで、微笑ましさもあり、スタッフや出演者のひたむきさ、涙ぐましいまでの努力が伝わって来る。装置(三宅景子)は、写真で見る前回(2005年)の舞台よりも簡略化されたようでもあるが、ワイヤーで吊り下げられた銀色に発光する巨大な円球(月)を効果的に使用、それなりの面白さが作られていた。器楽アンサンブルの演奏水準も確実であった。

 だが、地方オペラが良くやっており、その努力を高く評価したい――などという玉虫色のお世辞を並べるのは、一所懸命オペラに取り組んでいる人たちに対して、むしろ著しく礼を失することになるだろう。
 それゆえ、私はやはり率直に書いておきたい。
 
 第一の問題は、やはり「劇としての演技」が全く不在の演出にある。
 常に客席を向いて手を拡げて歌い、喋り、あるいは客席に向かって一列に並んで歌い踊り(安物のミュージカルみたいだ)、そうでなければ所在無げに佇むといった所作は、いまどきのオペラの舞台が採るスタイルではない。地方オペラ運動が相も変らずこの段階からスタートしているようでは、先行き時間がかかって仕様があるまい。
 演出家は、前時代的な既成概念に囚われず、もっと現代の感覚を取り入れて欲しいものである。DVDも山ほどあるし、ペーター・コンヴィチュニーの優れた演技指導も日本で行なわれている。参考にできる素材は、いくらでもあるのに。

 第二は、歌詞の発音とセリフの発声に関してだ。
 特に「語り手」役の歌手は、「歌」の発声を優先するのではなく、――それもこの日のような、旧いタイプの日本のソプラノ歌手のような大時代的な発声でなく、歌詞がよく聞き取れるような歌い方をしなくてはならない。またペテロ(今回の表記はペトルス)役の歌手も、特に舞台奥での歌は、何を歌っているのか全く理解できなかった。
 皮肉にも、最も歌詞が明快に聞こえたのは、地下の亡者たちなどの、合唱のアンサンブルであった(これは評価されて然るべきである)。
 そしてセリフの発声も、声を張り上げ、絶叫するという、素人劇みたいなことをやるべきではない。もともと声はいい人たちなのだから、もっと自然に発声できるはずだろう。

 第三には、柳澤寿男の指揮である。極めて丁寧な音楽づくりで、器楽アンサンブルと声楽のバランスも良く、真摯に作品に取り組んでいることは解る。だがオペラとしては、もう少しドラマティックな音楽的演出の流れが欲しいのだ。特に終結へ向けての、亡者たちの乱痴気騒ぎの場のあとの安息の大団円では、音楽に緊迫感が失われ、妙に延々と長くてくどい、という印象を抑え切れなかった。
 これは、もしかしたらテンポの設定にもよるのではなかろうか? パウゼの長さや、セリフのあと音楽に移る「間」の設定が、どうもあまり舞台演劇的(?)でないのである。つまり、クライマックスへの追い込みが造られず、悠々としすぎているような気がするのだが、いかがなものか。

 このプロダクションは、来年1月に新国立劇場の小劇場で「地域招聘公演」として上演されるそうである。儀礼的な拍手だけで済まされるようなことになって欲しくない。どこまで改善できるだろうか?

 21時30分発のANA最終便で帰京。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://concertdiary.blog118.fc2.com/tb.php/572-ae4a5a26
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

























Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

最近の記事

お知らせ

●2007年7月以前のArchivesを順次、アップロード中です。併せてご覧下さい。
2007年7月
2007年6月
2007年5月
2007年4月
2007年3月
2006年7月

Category

ブログ内検索

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」