2020-04

9・15(火)ズービン・メータ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

  サントリーホール

 R・シュトラウス・プロ。演奏曲順は、先に「ドン・キホーテ」、後半に「英雄の生涯」、という具合に変更された。当然だろう。

 メータも今年73歳。毒気も抜け去った感じ。「ドン・キホーテ」の演奏など、随分淡白である。タマシュ・ヴァルガ(チェロ)とクリスティアン・フローン(ヴィオラ)のソロも流麗で甘美で、「英雄ドン・キホーテの生涯」(?)を描くというよりは、結局ウィーン・フィルの音色の美しさだけを印象づける演奏になった。

 「英雄の生涯」も、冒頭から暫くは比較的温厚な演奏が続く。
 聴きながら、終りまでずっとこの調子ではたまらないなと思ったり、先年のティーレマンとの大芝居に富んだ演奏をふと思い出したり、最近このオーケストラをアーノンクールやハーディングなどあざとい指揮者で聴くことが続いたから、たまにはこういう正統的でストレートな演奏で聴くのも悪くないかな、などという雑念に悩まされたりしていたが、「英雄の伴侶」に入り、フォルクハルト・シュトイデが表情たっぷりのヴァイオリン・ソロを聴かせるあたりから雰囲気が変わりはじめた。達者なソロだが、曲の内容にふさわしくコケティッシュな口調も聞きとれて、英雄役の低音楽器群との対話を多彩にしてくれる。

 続く愛の場面に至るや、一気に流れ出る豊麗芳醇な響き。これこそ、まさにあのウィーン・フィルならではのものだろう。
 「英雄の戦い」の後半から「英雄の業績」直前まで、怒涛のごとく押しに押す音楽の勢いも凄い。決して大芝居をすることなく、自然に畳み込んで行くだけで、作品自体の力は充分に発揮される。
 といってそれは、メータが何もしていないという意味ではない。おそらく彼の中では、今夜のプログラムの中では、「ドン・キホーテ」を抑制気味に演奏して、後半の「英雄の生涯」にクライマックスを設定し、さらにその中盤から後半にかけて頂点を築くように音楽を持って行く――という設計ができていたのだろう。

 「英雄の業績」の中で、イングリッシュ・ホルンがちょっとリズムをずらせながら、あたかも演歌の名調子みたいに歌って行く呼吸の面白さ。そして「英雄の引退」までの間、これぞウィーン・フィルの本領――玲瓏豊麗な美しさの極地ともいうべき弦とホルンの和音の響き。これ以上を望むのは贅沢に過ぎるのかもしれぬ。

 アンコールは、まずヨハン・シュトラウス2世の「アンネン・ポルカ」。私のとりわけ好きな曲だ。主題が出て来ると、胸の中に温かいものが湧き出て来るような思いになる。そして最後に「トリッチ・トラッチ・ポルカ」。この2曲はもう、誰が指揮しようと、ウィーンのオーケストラのものだ。
 

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://concertdiary.blog118.fc2.com/tb.php/565-d4b23177
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

























Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

最近の記事

お知らせ

●2007年7月以前のArchivesを順次、アップロード中です。併せてご覧下さい。
2007年7月
2007年6月
2007年5月
2007年4月
2007年3月
2006年7月

Category

ブログ内検索

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」