2020-07

9・7(月)サイトウ・キネン・フェスティバル松本
小澤征爾オーケストラコンサート最終日

  長野県松本文化会館

 名古屋12時発の「ワイドビューしなの11号」に乗ると、松本には14時03分に着く。快晴の木曽路を時速120キロで快走するのは気持がいい。この線の特急には初めて乗ったが、中央線も西線となると随分飛ばすものだと驚いた。

 サイトウ・キネン・フェスティバルの8月下旬の「戦争レクィエム」は、バイロイトに行っていた関係で残念ながら聞き逃した。結局、今年の音楽祭で聴けたのはこの小澤征爾のオーケストラコンサートの最終公演のみ。
 しかし、最後を飾るにふさわしく、いい演奏だった。プログラムはラヴェルの「道化師の朝の歌」と「シェエラザード」(ソロはスーザン・グラハム)、後半にブラームスの「交響曲第2番」。

 名手ぞろいのサイトウ・キネン・オーケストラ(SKO)も、最近はプレイヤーの世代交代が進んだためだろうか――あるいは小澤征爾の指揮の変貌ということもあるだろうが――初期の頃のようにガリガリ猛烈に弾くという傾向がなくなり、全体に音色がすっきりして柔らかくなって来たように感じられる。その代わり、以前のような一種のアクの強い個性が失われ、どことなくおとなしいオーケストラになって来たような気がしないでもない。
 まあ一長一短だが、私としては柔らかくすっきりした響きの方が好みに合うので、近年の演奏は概して気に入っている。

 今夜の演奏でも、「道化師の朝の歌」の冒頭からすこぶる軽やかな、しかもフワリとした響きの躍動が感じられ、それはなかなか快いものであった。2曲目の「シェエラザード」も、グラハムの歌唱を含めて小澤得意の叙情美が充分に反映された演奏である。
 洗練された味とか洒落っ気とかはあまり感じられないけれど、もっと響きの豊かなホールで演奏されたなら、そういったものも生まれたかもしれない。いずれにせよこういう演奏を聴くと、小澤がフランスものをもっと(昔のように)たくさん振ってくれたらと思わずにはいられない。

 以上2曲でのコンサートマスターは、それぞれ小森谷巧、ジェニファー・ギルバートがつとめていたが、後半のブラームスの「第2交響曲」では豊嶋泰嗣が登場。

 しかしこの曲でも、SKOの初期の頃のような猛烈型の演奏は既に影を潜め、もっとしなやかに、しみじみと歌い上げるようなアプローチになっている。第3楽章での弦の歌などには、このオーケストラの昔ながらの厚い響きが残っているが、それも今は囁くような柔らかさの方が際立っているようだ。
 第4楽章はまさにSKOの威力を発揮した演奏だが、熱狂的な最後の頂点でも、かつてのように威圧的な表情になることは、もうなかった。小澤とこのオーケストラの良い面への変貌をまざまざと感じさせるような表現であり、久しぶりにこの曲のいい演奏を聴いたという気にさせてくれたのであった。

 カーテンコールで、指揮者と楽員が一緒に出たり入ったりするのはいつもの通り。最終コンサートとあってリンドウの花が捧げられ、小澤を先頭に楽員たちやグラハムがそれを客席に投げ入れるというフィナーレの風景。東京などでは見られないアットホームな雰囲気である。
 このあと、8日と9日には、長野県の中学1年生を対象とした「青少年のためのオペラ ヘンゼルとグレーテル」が上演される。この音楽祭には、この他にも「子どものための音楽会」などがある。松本在住の親戚に聞いたところでは、子供たちは毎年それらをたいへん楽しみにしているそうだ。

 なお、以前からその傾向があるが、NHKのテレビカメラは、舞台上であちこち動きすぎる。放送局たるもの、詳細に報道することは重要な使命だが、そのために聴衆の気を散らし、演奏会の雰囲気を損なうようなことがあってはならない。

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