2020-04

6・12(金)ウラジーミル・スピヴァコフ指揮
ロシア・ナショナル・フィルハーモニー交響楽団

    サントリーホール

 スピヴァコフが指揮台に上って、指揮棒を振り上げる。「ロメオとジュリエット」(チャイコフスキー)の最初の音を予想した瞬間、始まったのは「君が代」。誰しも不意を衝かれたという感だったろう。両国国歌の演奏の最中、外国人客も含めて、起立したのは多くても10人程度か。いずれにせよコンサートホールでは、それぞれの考えに任せれば充分。しかしこの国歌の響きから早くも、噂に聞くこのロシア・ナショナル・フィルが本当にいい音色を持った優秀なオーケストラである――ということが聴き取れたのは事実であった。

 プーチン大統領の肝煎りで2003年に創設されたこのオーケストラ、たしかに優秀な楽員を揃えているようである。個々の奏者の技量も基本的にしっかりしているし、とりわけ弦の音色の瑞々しい輝かしさは、「ロシアの弦」の伝統を受け継ぐものだ。
 チャイコフスキーの「ロココ風の主題による変奏曲」と「アンダンテ・カンタービレ」(チェロとオーケストラによる版)、休憩後のショスタコーヴィチの「第5交響曲」など、いずれも厚みのある明るく洗練された音色、均衡の保たれた響きにあふれていた。

 ただ、それはいいのだが、肝心の芸術監督・首席指揮者のスピヴァコフの指揮が――昔とほとんど変わっていない。
 特に今日は、終始イン・テンポの指揮。しかも音楽のエスプレッシーヴォにも、曲想に応じて刻々変化するといった要素が皆無なのだ。要するに、演奏が何とも単調なのである。
 かようにサウンドを磨くことだけにこだわった演奏では、作品本来の美しさ以上のものは創り出せまい。その意味で、「ロメオ」も「ロココ」も「カンタービレ」も、金太郎飴みたいに一本調子な演奏であった(ソロのガブリエル・リプキンも今日は彼に似合わず音楽にノリが不足していたようだ)。

 むしろ、アンコールでの3曲――シュニトケの「アダージョ」、チャイコフスキーの「チャールダシュ」と「トレパック」――のような軽い小品の場合は、彼らのしなやかな響きが存分に生きる。特に「チャールダシュ」の最初のラーシュ(ラッサン)における驚異的に艶っぽい弦の音色は、なるほどこれぞハンガリー民族舞曲の味か、と思わせるほどであった。

コメント

国歌の件です

東条様 はじめまして。この演奏会を私も聴いておりました。冒頭に国歌というのは久しぶりの体験ですが、その段階で私も「なるほど、これはいいオーケストラだなあ」と思いました(本編の音楽で、あの唐突な棒にあれだけつけられる点についても、です)。国歌については、たしかに起立される方の数はきわめて少なかったですね。私も立ち上がりませんでした一人です。「それぞれの考えに任せれば充分」という一言に、およばずながら賛成一票です。
 あと、昨日の東響の定期でもお姿を拝見しました。すばらしい演奏で感銘を受けたのですが、終演後、二階正面の関係者らしい人たちが次々に席を立たれるなかで、東条さんが最後まで拍手を贈っていらっしゃっる姿にまた感銘を受けました。

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