2020-04

6・4(木)ウラジーミル・フェドセーエフ指揮
モスクワ放送交響楽団(チャイコフスキー交響楽団)

  サントリーホール

 コントラバス10本が舞台奥一列にずらりと並ぶ配置は、いつ見ても壮観。この楽器はそう配置した方がよく響くのだ、とだれかが言っていた。

 コントラバスだけでなく、このオーケストラの弦は、全部が実にたっぷりと豊かに鳴る。「ロシアの弦」の威力だ。「白鳥の湖」の序奏、オーボエのあとにチェロが美しく朗々と歌い始める瞬間から早くも、このオケの弦はいい状態にある――と実感できるのではなかろうか。
 「第4交響曲」でも同様である。第1楽章では、たとえば第99小節からの4小節間、弦全体がユニゾンで大津波のように滔々と押して行くさまは迫力そのものだし、第2楽章の副次主題でも、弦の響きがふくよかな哀感に満ちて懐かしい。

 交響曲は、総じてくぐもった音色で、翳りの濃い響きで演奏されたが、これはフェドセーエフとこのオーケストラの近年のお家芸ともいうべきものである。永い間コンビを組み、互いを知り尽くしている指揮者とオーケストラの最良の結実――と言っていいであろう。

 前半の曲目、「白鳥の湖」は、フェドセーエフ自身による選曲。有名な第2幕の「情景」が入ってないのはつまらない、とぼやいている人もおられたが、まあ、「ウェストサイド・ストーリー」の「シンフォニック・ダンス」版に「トゥナイト」が入ってないという例もあることだし、仕方ありますまい。
 とにかくこれは、超遅テンポで、バレエ的要素を一切排した、さながら重戦車軍団が最徐行で地響き立てて進軍して行くような「白鳥の湖」であった。

 交響曲の方もかなり遅めのテンポで、最弱音を多用し、テンポの変化についてもスコアの指定以上に趣向を施している。第2楽章の中程のピウ・モッソのテンポが、それ以前のテンポをそのまま引き継いだものだったのには驚いたが、しかしそれはそれで面白い効果を生んでいた。
 いずれにせよ、フェドセーエフの楽曲構築の設計はさすがに見事と言ってよい。第4楽章で「運命の動機」がそれまでの喜びを中断するというくだりも、まさにその必然性が納得できるという感じなのだ。そして、くぐもった音色にもかかわらず、すべての声部は明晰に聞こえる。こういう演奏で聴くと、チャイコフスキーという人は、なんと管弦楽法の巧い作曲家だったのだろう――と実感できるのである。

 2曲のアンコールもチャイコフスキーで、「四季」からの管弦楽編曲版による「4月」――会場での表示では「雪の下」となっていたが、普通は「雪割草」という訳が使われているのでは? それに「白鳥の湖」からの「スペインの踊り」。
 後者でタンバリンを叩いていたおじさんは、以前「雪娘」の「道化師の踊り」で、二つのタンバリンを両手で頭上高く振り回して大見得切っていた人ではなかろうか。今夜も最後は二刀流で、派手なところを見せていた。

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