2019-05

3・11(水)ダニエル・ハーディング指揮新日本フィルの
第2弾「死と変容」「英雄交響曲」

  サントリーホール

 前半は弦16型によるR・シュトラウスの「死と変容」、後半は12・12・8・7・6という編成によるベートーヴェンの「英雄交響曲」。
 
 「死と変容」は、いわゆる神秘的で重厚豊麗な響きとは対極的な、精妙に交錯する音の線が見えてくるような感覚に引き込まれる演奏。
 最強奏での音色は必ずしもきれいとは言えなかったが、それでも一昨年夏のザルツブルク音楽祭で聴いたウィーン・フィルとの、あの汚いガシャガシャな音による演奏とは格段の差だ。ハーディングが後期ロマン派の作品で試みたいのはこの手法なのだということがよく理解できる。指揮者の意を酌み取ろうとする新日本フィルの姿勢の結果というべきか。
 弱奏個所――特に全曲結尾部分での澄んだ和音の響きはすこぶる印象的であった。

 もっとも、相変わらず遅いテンポの個所は極端に遅い。序奏のところなど、この分では先は長いぞ、と気がもめて来るほどである。
 遅いこと自体は、決して悪いものではない。ただ要は、彼の指揮には、遅いテンポの個所で充分に緊迫感を保ち切れない――という欠点がまだ残っていることであろう(ティーレマンにも十数年前にはその傾向があった――ちょうどあのベルリン・ドイツ・オペラを率いて来日した頃だ)。
 それでも、全曲の演奏時間はおよそ27分。時間的には極端に長いというほどではない。となると、やはりそのテンポに緊張感があるかないか、という問題になるのだろう。

 大編成のあとに、12型に縮小された編成の「英雄」が来る。
 この音量的な変化のアンバランスには、私自身は些か戸惑いを感じるものがあった。彼としては音楽そのもののエネルギーと精神的な昂揚を以て第2部を盛り上げようとしていたのだろうが、こちらの耳の切り替えにはやや時を要した。
 演奏は、スフォルツァンドも、またスタッカート(ただしベーレンライター版だから錘点の方だが)も、予想通り明快で歯切れよく、軽量で軽快な「英雄」となっていた。この編成で、しかもこの鳴らし方であれば、第2楽章のあのホルンの主題(第135小節以降)も、まさにスコア通り3番ホルン1本のみで充分な力強さが出せるのだ、と証明してくれる演奏であった。今日はこのホルン3本が大活躍。

 ハーディングはしばしばホルン群の音を前面に押し出すが、その一方でトランペット(2本)は抑えに抑え、せいぜい和音を厚くするだけの働きしかさせていない。彼が引き出す独特の音色のもとは、こういうところにもあるのかもしれない。

コメント

昨日名古屋で聴きました

東条先生。昨日名古屋で「皇帝」と「英雄」を聴きました。前半の「皇帝」はオケがバラバラで、ホルンが劈くような耳障りな音を出し、ハーディングらしからぬ演奏でした。ピアノの若林氏も弾きまくってはいましたが、正直言って味も素っ気もない演奏でした。後半の「英雄」は音が纏まって、ましな演奏になりました。小編成のオケでのスマートなモダンな演奏としては成功していたと思います。ただ一緒に行った名古屋の仲間は重厚長大が好きなので、不満気ではありました。

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