2019-08

3・5(木)METライブビューイング
ドニゼッティ:オペラ「ランメルモールのルチア」

  新宿ピカデリー

 去る2月7日のメトロポリタン・オペラ上演のライヴ映像だ。今シーズンはこれが第7弾。

 タイトルロールのアンナ・ネトレプコは――随分ふっくらして来たけれど、相変わらず巧い。「狂乱の場」など、眼の演技が凄いので、このようにアップで映されると、オペラは鬼気迫るドラマになる。
 その兄エンリーコのマリウス・クヴィーチェンも、なかなかいい悪役ぶりだ。ライモンドを歌うイルダール・アブドラザコフにも、威厳が備わって来た。

 一方、ルチアの恋人エドガルドは、「体調不良」のロランド・ビリャソンの代役としてピオトル・ベチャワ(ベチャーラBeczala)だと思っていたが、字幕チームが本人に確認したら「ベチャワ」ですと)が歌った。声はいい。が、顔の表情がおっとりしているので、悲劇的な迫真力を欠く。ビリャソンだったら激怒の表情が凄いから、2人の敵役の対決にもずっと凄みが出たろうに。

 指揮はマルコ・アルミリアートだ。ハープの安楽真理子さんも大活躍で、アップで撮られているし、エンド・タイトルでもクレジットされている。
 METはふだんからノーカット上演主義を採っているので、今回も第2幕の大詰めの合唱の一部や、第3幕第1場の前記「敵役の対決」場面も省略せずに演奏してくれたのはうれしい。私が好きな個所なので。その代わり、上演時間はだいぶ長くなった。また「狂乱の場」では、グラス・ハーモニカが復活されていた(もしかしてヴェロフォンだったか?)。

 演出はマリー・ジンマーマン。オーソドックスな手法だが、演技は脇役に至るまでかなり細かい。こういう舞台を一概に保守的ときめつけるのは間違いである。
 だが、いくら亡霊がルチアにとって大切なモティーフ――スコットの原作に従った、と演出家が説明している――になっていたとしても、ラストシーンでルチアを亡霊として登場させ、エドガルドに口づけしたまま倒れ伏すのは、オペラの舞台としては説明過剰だ。俗っぽくて感銘を損なう。

 ライブビューイング売り物の幕間のインタビューは、今回も面白い。ナタリー・デセイ(ドゥセ)の陽気な進行で、主役たちが愉快に、率直に語る。もともとはナマ中継番組だから、歌手たちも余程のサービス精神と余裕がないと、うまく喋れないだろう。現に、いつもは賑やかにはしゃぐネトレプコも、今日は「狂乱の場」を前に緊張していたのか、さすがに少し口数が少ない。
 進行役(ドゥセ)が、さりげなくMETのコマーシャルや、次のプロダクションのPRを織り込むところも、いかにもテレビ的だ。私など、上演の本番がたとえあまり面白くなくても、この幕間の趣向が楽しみでならないのである。何度か取材で訪れたことのあるバックステージの光景も懐かしいし。

 今日の上映、お客さんがよく入っている。大部分が女性客だ。常連も多いらしく、話を小耳に挟んでいると、なかなか詳しい人がいる。今シーズンの「ライブビューイング」は、札幌から福岡までの各都市で、このあと「蝶々夫人」、「夢遊病の女」(ドゥセとファン・ディエゴ・フローレスが共演)、「ラ・チェネレントラ」と続く。
 

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