2021-06

2021・5・15(土)大植英次指揮東京交響楽団

      ミューザ川崎シンフォニーホール  2時

 「名曲全集」シリーズ。
 武満徹の「鳥は星形の庭に降りる」、バルトークの「ピアノ協奏曲第1番」(ソリストは北村朋幹)、ブラームスの「交響曲第2番」というプログラム。当初予定されていたジョナサン・ノットに代わり、先週の延期公演に続き大植英次が指揮することになったもの。コンサートマスターはグレブ・ニキティン。

 タケミツの音楽は、日本人指揮者と外国人指揮者とではアプローチがかなり異なり、それぞれの良さがあるが、今日の大植の指揮はどちらかというと後者の部類に属するものだろう。それも、謂わば大植流だ。「武満のフォルテ」がこれほど荒々しく太い音で響かせられた演奏は、私はこれまであまり聴いたことがない。

 コンチェルトでは、北村朋幹が澄んだ音色で、透明感のある美しいバルトークを聴かせた。当初の予定通り、ピエール=ロラン・エマールがソリストを務めていたとしても、多分これに近いイメージのバルトークとなったのではないか。
 ただ、今回はステージ上手の前方に打楽器群を配置していたが、この音量のためにソロ・ピアノやオケの他のパートが聞こえなくなることもあって、これは問題を残したろう。この配置は、弦が良く鳴るヨーロッパのコンサートホールではバランスが失われることはないかもしれないが、日本のホールでは難しい。

 ブラームスの「2番」では、第1ヴァイオリンは14人(14型)でありながら、チェロは10、コントラバス8(16型相当」という、低音部を増強した編成が採られていた。大植の指揮も、もちろん先週のチャイコフスキーの場合と違い、凝った細工は一切ないストレートな構築で、骨太な力感を湛えたまま押して行く演奏をつくり出していた。

 こういうタイプの彼の指揮を昔どこかで体験したことがあるな━━と考えつつ、ふと思い出したのが、バイロイト祝祭で聴いた彼の指揮によるあの「トリスタンとイゾルデ」での演奏である。
 あの音楽のスタイルは━━あれこれ批判された部分は別として━━結局いくつかの点で、彼の師バーンスタインがミュンヘンでレコーディングした「トリスタンとイゾルデ」の演奏に影響を受けているのではないか、と、私は当時から感じていた。

 となると、今回のブラームスの交響曲の演奏についても、大植の精神の中には、未だ恩師バーンスタインの音楽が生き続けているのではないか、ということになる。もちろんこれは単なる印象に過ぎない。
 だが、バーンスタインのロマン派の作品の演奏では、常にこれに似た太くどっしりした筋金のようなものがそれをつらぬいていたことは確かではなかろうか。

 今回の大植の指揮は、そうした分厚い力感の中で、第4楽章の頂点では彼特有の猛烈な熱狂を東響から引き出しつつ、轟然と結んで行った。中間2楽章での濃厚な情感にも不思議な魅力が感じられた。今日の東響は、ホルンも大健闘。

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