2021-06

2021・4・24(土)アレクサンドル・ラザレフ指揮日本フィル

      サントリーホール  2時

 桂冠指揮者兼芸術顧問アレクサンドル・ラザレフを久しぶりに指揮台へ迎えた日本フィルが、グラズノフの「交響曲第7番ヘ長調Op.77《田園》」と、ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」(1947年版)を演奏した。後者でのピアノ・ソロは野田清隆。コンサートマスターは扇谷泰朋。

 鬼将軍ラザレフに率いられた日本フィルは、さすがに見事な演奏を繰り広げた。定期2日目ということもあったろうが、それはこの半年か1年の溜まった良質なエネルギーを集約し、いっぺんに噴出させたような、この上なく濃密な演奏だった。これまで何年か聴いてきたこのコンビの演奏の中でも、屈指のものだったと言ってもいいだろう。

 グラズノフの「7番」は、この上なく美しいカンタービレに満ち、かつ官能的で艶めかしい表情で演奏された。私はこの作曲家については、これまであまり共感を抱いていなかったのだが、こういう演奏に接すると、考えを大きく変えなければなるまい。ラザレフが「ロシアの魂」として指揮して来たグラズノフの交響曲ツィクルスは、やはり説得力のあるものだったのだ。

 だが、それ以上に今日は、「ペトルーシュカ」での壮麗かつ壮大な演奏に魅了された。ラザレフの指揮を聴くと、彼がストラヴィンスキーをロシアの国民音楽の流れを汲む━━つまりリムスキー=コルサコフらの後継者としてスタートした作曲家として位置づけていることが感じ取れる(これはゲルギエフとも軌を一にする考え方だ)。
 それにしてもこのラザレフが日本フィルを自在に制御して引き出した圧倒的な色彩感には、ただもう感嘆するしかない。それに加え、演奏にあふれる重量感、輝かしさ、強靭な推進力の豊かさと言ったら━━。

 日本フィルも、「勇将の下に弱卒なし」を地で行ったような演奏だったと言えよう。目くるめくような音色で豊かな空間的拡がりを感じさせた木管群、鮮やかなソロのトランペットを筆頭に躍動した金管群、それに12型ながら驚異的に分厚く重量感にあふれていた弦楽セクションなど。私がナマで聴いた「ペトルーシュカ」の中でも、これは一、二を争う充実した演奏だったと言っても、決して誇張にはならないと思う。

 ラザレフは、今回2週間のホテル待機期間を経ての登場だったが、演奏会は昨日と今日のわずか2回だけのこと。もったいない。明日からは「緊急事態宣言」で、東京都内の演奏会はほとんど姿を消す。そのぎりぎりの日に、こういう演奏が聴けたことは幸いであった。

 そういえば、私のところへも昨日、「ワクチン接種券」が本当に(!)来た。拙宅の地域の接種会場での開始は来月13日以降とのことだし、また予約が簡単にできるのかどうかも心もとないのだが、とにかく一旦コロナに罹ったら周囲の人にかける迷惑たるや尋常ならざるものがあるから、やはり早めに接種してもらおうと思っている。

コメント

ワクチン接種は自治体によって状況が全く違うようで、もう少し何とかならないものかと思います。私は福島県の人口7万人程の某市在住です。父が東条先生と同じ年齢なのですが、市の方針でまずは年齢90歳以上の2000人から接種を始めるのだとか。それも電話かメールで申し込まないといけないそうです。市のやることだから恐らく何回電話をしてもつながらないのでしょう。90歳以上の人にそれをやれっていくらなんでも無理ですよ。
早く堂々と東京にコンサートを聴きに行けるようになってほしいものです。

横綱相撲!

拝聴しました。グラズノフも悪くなかったですが、やはり当日の白眉はペトルーシュカでした。横綱相撲とでも言えばいいのでしょうか、実に堂々とした名演で、素晴らしいオケの妙技を見事に余裕のある演奏で満喫することができました。ラザレフは、ところどころ指揮をやめ、指揮台から降りるなどして、聴衆の方を向き、「この素晴らしいソロを聴いてごらんよ」という表情を見せて聴衆の笑いを誘っていました。

少し思ったのですが、指揮者がそのような少し茶目っ気のある姿を見せているのに、オケの皆さんはまじめな表情をかえず、どちらかと言えば仏頂面で演奏を続ける、このあたり実に日本人ぽいなと(笑)。オケの皆さんも指揮者に応えて笑顔を見せ、楽しむ様子を見せれば、会場がもっと盛り上がったのではないかと。

だから日本のオケは自発性に欠けるなんてステレオタイプな批評に与するつもりは全くないのですが、音楽を演奏することの楽しさ、喜びのようなものをもっと前面に出してもいいのでは、という感じが少ししました。たとえば、読響のコンマスの長原さんは、旋律の受け渡しのところでソリストとアイコンタクトしたり、指揮者に微笑み返しをする姿を見せることがあって、とても素敵だと思うのですが、そういうスタイルのコンマスは我が国ではまだ少数派のように思います。

さて、4都府県に緊急事態宣言が発令されました。クラシックのコンサートについては、まん延防止等重点措置区域ではほぼ収容人員上限まで聴衆を入れて開催可能なるも、緊急事態宣言発令下では中止となる(無観客で開催はできるが、公営施設が休業に入るため中止を余儀なくされる)ケースが多いようです。GWに予定していた都内のコンサートが既にいくつか中止となりましたが、個人的には、5月の「近江の春 びわ湖クラシック音楽祭2021」が予定通り開催されるか、気になっております。早く感染が収束しますように。

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