2021-06

2021・3・17(水)太田弦指揮日本フィルハーモニー交響楽団

      東京芸術劇場 コンサートホール  7時

 「2021都民芸術フェスティバル」のオーケストラシリーズ最終日。大阪響正指揮者・太田弦(27歳)の客演指揮で、シューマンの「ピアノ協奏曲」(ソリストは伊藤恵)及びリムスキー=コルサコフの「シェエラザード」。コンサートマスターは木野雅之。

 コンチェルトでは、シューマンを得意中の得意とする伊藤恵が伸縮自在の演奏を披露。特に第1楽章では、あたかも音楽に言葉が付いているかのように、何かを独白的に語り続けるようなテンポとエスプレッシーヴォでソロを繰り広げた。若い太田弦もよくこれに付けて行ったと思われる。
 ただ、オーケストラがいかにも不愛想で野暮ったく、例えば各フレーズの終りを投げ遣りのような形で結ぶといった演奏をするのには、何とも耐え難い思いをした。リハーサル不足の感も覆い難いが、インキネンやラザレフが引き締めないとすぐこういう荒っぽい演奏に戻ってしまうのが日本フィルの悪い癖だ。

 だが、「シェエラザード」の方は、こちらは重点的にリハーサルを行ったのだろう。
 太田弦の指揮はかなり凝った、細かく神経を行き届かせたもので、冒頭のように総休止を長く採り過ぎて緊張感を薄めさせたのを除けば、全体に流れも良く、この作曲家特有の主題の執拗な繰り返しにおいても単調に陥らず、多彩な変化を持たせつつ演奏を盛り上げるという手腕を示していた。

 そして日本フィルも、例えば第2楽章でのファゴットのソロや、トランペットトロンボーンの掛け合いの個所、第3楽章でのチェロなど、すこぶる表情豊かに応じていた。本気になればこのような演奏も軽々とやってのけるオーケストラなのだということ。第4楽章での大暴れ的な咆哮はこの楽団のお家芸だ。それは如何にも洗練とは程遠いものだが、良くも悪くもこれが日本フィルのカラーと謂うべきだろう。

 若い太田弦の指揮を聴いたのは、私はこれが4度目になる。初めて大阪響との「第9」を聴いた時にはあまりに几帳面で生真面目過ぎるのに些か失望した(→2019年12月27日)が、新日本フィルとの「ザ・グレイト」(→2020年7月18日)では打って変わった勢いのいい、若者らしい気魄に富んだ指揮に驚かされたものだ(※)。
 そのあとの山響客演(→2020年10月10日)は曲目が特殊だったので別として、今回の「シェエラザード」を聴くと、彼もやはりヴィヴィッドな音楽性を備えた指揮者なのだということが判ったような気がして、楽しくなった。これでオーケストラの音色やアンサンブルを充分に制御できるようになればと思われるが、それは今後を待つことにしよう。

(※)これはエクストンからCDで出た(OVCL-00742)が、その特徴がはっきりと聴き取れる。

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