2021-06

2021・2・2(火)原田慶太楼指揮東京交響楽団

      東京芸術劇場 コンサートホール  7時

 「2021都民芸術フェスティバル参加公演 オーケストラ・シリーズ」の2日目。
 原田慶太楼と東京交響楽団が、グリンカの「ルスランとリュドミラ」序曲、ブルッフの「ヴァイオリン協奏曲第1番」、ベートーヴェンの「英雄交響曲」を演奏した。協奏曲でのソロは前橋汀子、コンサートマスターはグレブ・ニキティン。

 勢いよくステージに出て来た原田慶太楼は、指揮台に飛び上がった瞬間、答礼を省略して、拍手を背に、いきなり「ルスランとリュドミラ」の序曲を振り始める。彼は以前にもこのテで「詩人と農夫」を指揮し始めたことがあった。今回は曲が曲だけに、響きも演奏も粗削りだが、ティンパニの強打が音楽全体を煽っていることもあって、すこぶる痛快な印象を与える。若い指揮者ならではのステージで、微笑ましい。

 協奏曲では、前橋汀子が年齢を感じさせぬ力強いソロを聴かせた。彼女の演奏を聴くのは久しぶりだが、相変わらず元気なのはうれしい。思えば昔、まだ私がFM放送の現場にいた頃、彼女はすでに人気の美女奏者だった。私が収録放送したステージで、彼女がすらりとした身体を弓のように反らしつつフランクのソナタの第3楽章を情熱的に弾いていたあの迫力ある光景は、今も私の目に焼きついている。
 そして、今なおその演奏に強靭なパワーを持続させているというのは、本当に大したものと言わなければならぬ。今日聴いた彼女のソロは極めてごつごつしたスタイルで、すこぶるユニークな演奏ではあったが、原田もこの「日本のイダ・ヘンデル」ともいうべき、頑固そのものの演奏を押し通す大先輩を、ひたすら巧く盛り立てていたようである。

 後半の「英雄交響曲」では、原田慶太楼の個性が遺憾なく発揮された。特にティンパニの豪打を含めた、鋭いアクセントとスフォルツァンドを駆使した強烈なデュナーミクをこれほど躊躇なく構築する指揮者は、日本人の演奏家としては異色の存在であろう。だがベートーヴェンの「コン・ブリオ」の音楽は、こういうスタイルの演奏でこそ生きて来る。それに今日の演奏では、各声部が実に明晰に鳴っていて、ベートーヴェンの斬新なオーケストレーションの魅力を十全に感じさせてくれたのである。

 そのデュナーミクの強調も、第1楽章最後(671小節以降)や第2楽章のマジョーレの中(76小節)でのフォルティシモのように、スコアに忠実に行われていたのも印象的だった。
 もっとも、その一方、スケルツォの中での聴き手を飛び上がらせるようなティンパニの猛烈果敢なクレッシェンドとか、第1楽章最後の頂点で第1主題の旋律全部を(旧版のように)管で高らかに吹かせるとか、昔ジョージ・セルがやったように第2楽章と第3楽章をアタッカで演奏するとか、現代の若手指揮者としては珍しい手法をも使っているのは事実だが、しかし私は、それらをすべて大いに楽しませてもらったのである。

 とにかく、この指揮者は面白い。東京響はいい人を正指揮者にしたものだ。

コメント

全く同感!

伺いました。堪能して帰ってきました。今は破格の才能だと思います。音楽がエンターテインメントで、ワクワク楽しい。しかも作曲家への敬意が強く感じられます。何より、たった一日のリハで、ここまで仕上げるオケの掌握スキルに感服。東響も三人のホルンが果敢に攻めて見事。このままの成長を期待するに切です。

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