2021-06

2020・12・21(月)「富士山静岡交響楽団」誕生へ
 高関健指揮静岡交響楽団が初の東京公演

         東京オペラシティ コンサートホール  7時

 1988年に「静岡室内管弦楽団《カペレ・シズオカ》」として旗揚げ、1994年から堤俊作を音楽監督に迎えて現名称とした静岡交響楽団。その後、篠崎靖男を常任指揮者に迎えた時代もあったが、2018年からは高関健をミュージック・アドヴァイザーに迎えている。

 私も4年前に2回ほど本拠地の静岡市清水文化会館マリナート大ホールでその演奏を聴いたことがある(2016年3月27日12月18日)が、今日聴いた静響は、それとは全く雰囲気が違っているのに感心した。つまり、プロらしい雰囲気というか、意気込みというか、不思議なエネルギーが感じられるようになったのである。

 以前はプロ・オケと名乗ってはいても、県内演奏家と東京からの客員奏者の寄せ集めの臨時オーケストラ━━という感が抜けきらなかったのだが、現在はオーディションで集めた42名の楽員が居り、それに作品の規模に応じて客演奏者を加えるというスタイルになっているとのことだ。
 そしてまた、浜松フィルハーモニー管弦楽団と合体(事実上の吸収合併だろう)を行ない、2021年4月からは「富士山静岡交響楽団」という、何とも気宇壮大な楽団名に改称するというのである!

 その静響が100回定期を迎えた(12月19日)のに合わせ、今回はついに初の東京公演を実施した。プログラムは、高関健の指揮で、ベートーヴェンの「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」(ソリストは神尾真由子)と、ベルリオーズの「幻想交響曲」。コンサートマスターは客演の藤原浜雄。
 ━━今回は弦五部の各パートの首席は全て客演奏者だったようである。弦は12型編成(ただしコントラバスは6)だったが、「幻想交響曲」とあらば、それも含めて客演奏者が多く入るのは致し方なかろう。

 だが静響も、さすが高関健の指揮だけあって、特に協奏曲ではバランスの良い、引き締まった音を出した。いい演奏である。
 女神のような姿の白いドレスで登場した神尾真由子も持ち前の奔放で激烈で表情豊かなソロを両端楽章に投入し、かつ中間の緩徐楽章では濃厚な歌を聴かせたが、オーケストラがどちらかといえば生真面目な佇まいの演奏だっただけに、全体としては適度に活性化された面白いバランスになっていたとも言えよう。
 なお彼女のソロ・アンコールはシューベルト~エルンスト編の「魔王」で、これは以前にも聴いたが、歌曲の中に登場する3人(父親、子供、魔王)の声を強調して描き分ける奏法は相変わらず見事だ。

 後半の「幻想交響曲」は、咆哮する金管群の前では12型の弦はやはり音量的に分が悪いが、それを除けば予想を上回る出来だと言っていい。高関が弦楽器群から引き出す悪魔のグロテスクな表情も、明晰に生かされていた。最後の狂乱のクライマックスも、音の密度にはやや不満を残したとはいえ、充分な盛り上がりを感じさせた。

 問題は木管楽器群にあるだろう。フルートにはアンサンブルの上で腑に堕ちぬところがあり、一方第3楽章でのイングリッシュホルンは荒っぽく無造作で、どうみても「野に寂しく響く羊飼いの笛」の表情とは言い難い。またクラリネットも、第4楽章で断頭台の露と消える主人公の脳裏に一瞬浮かぶ恋人の姿としては無造作に過ぎるし、第5楽章での「グロテスクな姿に変わった恋人の姿」を表現するには表情がなさすぎる。

 まあ、そうは言っても、演奏全体には非常な勢いがあったので、総合的には良しとしましょう。ただ、2台のハープを最初から指揮者の手前両側(ステージ最前面)に配置し、第2楽章の時だけ奏者がステージに出入りし、それが終るとスタッフが出て来て楽器を撤収するというやり方は、雰囲気がガサガサしたものになって、あまりいただけない。

 ともあれ、地味な地方オーケストラから俄然攻勢に転じたこの静岡交響楽団、この勢いで行けば、東京と名古屋の間を埋める新しいプロ・オーケストラ地図を描くために一役買う存在となれるだろう。私も40年近く前、FM静岡(現K-Mix)の立ち上げのため4年間静岡県赴任をしたことがあり、静岡&浜松には今なお強い愛着があるので、応援したいところである。

コメント

マリナートで聴きました

マリナートで聴きました。驚いたことにお客さんが90%以上入っていて、在京のオーケストラでこの12月初めに聴いた時は3割程度の入りでした。木管はファゴットが歌いっぷりも良かったです。ベートーヴェンのバイオリン協奏曲、ソリストの神尾真由子さんは第一楽章と第三楽章のtuttiでオーケストラと一緒に弾いている箇所があり初めての経験でしたが、楽譜には指定なんですね。ハープはカーテンコールでソリストの様に紹介されて、それはそれで良かったです。

 昨秋の清水での未完成と、ブルックナーの7番(ハース版)の定演の演奏が、動画でアップされています。(記述の日現在。)HPによると、ハイドンの天地創造からのプログラム変更での演奏だったようですが、なかなかいいように思います。
 ただ、HPを見る限り、急な変更で、難しかったのかもしれませんが、ブルックナーの場合に必要な、版についての情報告知がなかったようなので、その辺の情宣スキルを高めながら、頑張って欲しいと思います。
 静岡ならば、名古屋方面からも、東京方面からも、新幹線で、(時間はかかりますが、鈍行列車でも?!)日帰りで十分に、少々観光もプラス・アルファして聴きに行くことができるので、状況を見て、聴きに行きたいと思います。

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