2021-06

2020・12・20(日)仲道郁代:ベートーヴェンのソナタ全曲演奏第2回

        横浜みなとみらいホール 1時30分

 仲道郁代の「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全曲演奏会」が既に開始されている。全4期計8回に特別演奏会という大がかりなプロジェクトで、これはベートーヴェン没後200年と、彼女自身の演奏活動40周年とが重なる2027年に向けての「Road to 2027」の一環だとのこと。

 今日の演奏会は第1期の第2回に当たるもので、プログラムの第1部に「第9番Op.14-1」と「第16番Op.31-1」が、第2部に「第24番Op.78《テレーゼ》」「第8番Op.13《悲愴》」「第14番Op.27-2《月光》」が演奏された。またプレトーク&コンサートとして、ツッカーマン製シュタイン・モデル(1790年頃の楽器の複製、61鍵430Hz)を使用してのベートーヴェンのソナタの演奏も行なわれた。

 プレも本番も、いずれも彼女自身が解説を入れながらの演奏で、そのきめこまかいサービスぶりは見上げたものだ。本番のリサイタルにおけるその解説は、曲にまつわる個人的な思い出をも交えるスタイルで、これはコンサートをアカデミックなものにせず、親しみやすいものにするという狙いだろうか。いかにも彼女らしい手法だ。
 ただ、ハンドマイクを使っていたとはいえ、今日はそのモノローグ的な低い声での話しぶりが所々はっきりと聞き取りにくい時があったが。

 私は彼女の演奏を聴いたのは久しぶりだが、まろやかで温かい音の、どんな最強奏の際にも音色の乱れのない、かつ美しさを失わないそのピアニズムは、以前と少しも変わっていない。これも、彼女が熱烈なファンを引き付けている要因の一つなのだろう。

 今日の演奏を聴いた範囲では、彼女の弾くベートーヴェンは、その作品群の多くに聴かれる魔性的な荒々しさや激烈な感情の爆発といった性格をも、すべてあたたかいヒューマンな視点で捉え、彼女独特の世界の中に蘇らせる、というものだという印象を受ける。そこには、所謂とげとげしくて神経質なベートーヴェン、闘争的なベートーヴェン、といった姿は見られない。

 このような「光の天使」の如きベートーヴェン像も、また一つの解釈なのではあろう。ただ、私の好みから言えば、彼の悪魔的な面も魅力的なものであって、━━いや、もともと今日の「第2回」のテーマは「月光~ベートーヴェンの恋」というものだったのだから、こちらがそんなニュアンスを求めるのは間違いかもしれない。
 それにしても、彼女がその「恋」に関連してアンコールで弾いたシューマンの「トロイメライ」の、何と陶酔的に美しかったこと。「仲道郁代のシューマン」は、やはり昔に変わらず絶品だ。

 このプロジェクトは、みなとみらいホールの協力によるとクレジットされているが、同ホールは改修のため2021年1月から何と2022年10月頃までの長期休館となるため、次の「第3回:テンペスト~飛翔する幻想」は2022年12月の開催になるらしい。随分間が空くものである・・・・。

コメント

「一流ピアニストはベートーヴェンを弾くべき」という思い込み(?)を捨てて、ショパン弾き、シューマン弾きとしてキャリアを築けば、もしかしたら今からでも世界的ピアニストになるのではないかと思います。ベートーヴェンも十分素晴らしいですが。

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