2021-06

2020・11・28(土)沼尻竜典指揮東京都交響楽団

     東京文化会館大ホール  2時

 ワーグナーの「タンホイザー」序曲、モーツァルトの「ピアノ協奏曲第20番ニ短調」(ソリストはアンドレイ・ガヴリーロフ)、ブラームスの「交響曲第4番」。コンサートマスターは山本友重。━━というプログラムだったのだが、次項で述べるような事情で、前半の2曲しか聴けなかったのは残念である。

 「タンホイザー」序曲は、さすがびわ湖ホールのワーグナー路線を成功させて来た沼尻竜典だけあって、堂に入ったもの。密度も濃かったし、特に後半の「巡礼の合唱」のモティーフが再現する日の出の個所では、演奏も充分に壮大な絵巻物のようになっていた。
 残響が少ないホールなので、オーケストラの音は乾き気味であり、金管の低音域での動きが妙に分離して聞こえたのは気になったが(1階席最後方での印象による)。

 モーツァルトの「20番」は、すこぶるユニークな演奏だった。
 まずそのテンポの速さ。第1楽章のアレグロからかなり飛ばし気味で、第2楽章は(速度指定はない)アレグレットのテンポになり、第3楽章は、スコアの指定の「アレグロ・アッサイ」を通り越してプレストといったイメージ。もっともこれは、他の演奏に比して速いということであって、「アレグロ」というテンポ表示をどう解釈するかは演奏者の考え次第なのだから、間違いではない。
 しかしいずれにせよ、全体の演奏時間が25分か26分くらいで終ってしまったのだから、他の演奏(大体30分)に比べれば相当な速さだったことは確かである。

 沼尻は切れのいいリズム感で正確に都響を制御してモーツァルトの端整さを打ち出し、一方のガヴリーロフは自由奔放、変幻自在にデュナミークや「間」を動かしてモーツァルトの激情を浮き彫りにする。
 ソリストが指揮者の造型の中で自由に躍動する、と解釈すべきか、全く異なったスタイルの激突というべきか。
 共存といえば言えないことはないが、水と油が最後までせめぎ合っていた、とも言えよう。その意味では、実に面白い「20番」ではあった。

 フレーズの最強音を叩き終った勢いで席から飛び上がるピアニストは珍しくはないが、モーツァルトの演奏で、しかも2度もそれをやるピアニストは、私は初めて見た。ガヴリーロフはお馴染のピアニストだが、以前からモーツァルトをこんな風に弾いていたのか?

 演奏会を最後まで聴いた音大教授A・Iさんの話によれば、「あの凄まじいモーツァルトのあと、沼尻さんと都響は、しっかりとしたブラームスを創って行きました」とのこと。

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