2021-06

2020・11・15(日)「ルチア あるいはある花嫁の悲劇」

      日生劇場  2時

 ドニゼッティの「ランメルモールのルチア」。
 当初予定していた全曲上演を、新型コロナ禍のため、田尾下哲(演出)の翻案により、ルチアという女性に焦点を合わせた楽曲構成と演出に変更したもの。全曲を90分に縮小、合唱なし、オーケストラの金管をピアノで代用━━などの手段が採られていたが、これが実に巧く出来ていたのに感心した。

 指揮は柴田真郁、読売日本交響楽団の演奏。今日は2日目の公演で、ダブルキャストの今日の歌手陣は、森谷真理(ルチア)、吉田連(エドガルド、城宏憲から交替)、加耒徹(エンリーコ)、妻屋秀和(ライモンド)、伊藤達人(アルトゥーロ)、布施雅也(ノルマンノ)、藤井麻美(アリーサ)。黙役として田代真奈美(泉の亡霊)。

  舞台上に姿を見せるのはルチアと、「泉の亡霊」のみ。その他のキャラクターは舞台両側の暗幕の中にいて、姿を見せない。音楽は要するにルチアの登場する場面を繋ぎ合わせた構成だから、結局森谷真理はほぼ90分間、出ずっぱりで激しい動きの独り芝居を続けながら歌い続けるということになる。
 有名な「六重唱」のあとの、激したフィナーレはそのまま生かされた。となると、このまま彼女は続けてあの長い「狂乱の場」を歌えるのか?とハラハラしたが、そのあとに「エドガルドとエンリーコの対決の場」が、部分的ながら挿入された。それゆえ、ここで彼女も少し休めるな、と安堵した次第。

 なお、この場面冒頭の嵐の音楽は、前場のフィナーレの最後の音にすぐ繋げられて開始されたが、それがルチアの演技と照明演出と併せ、彼女の精神が破壊されるさまを描いているようで、極めて不気味な効果を上げていた。そしてその2人の男の口論のさなかにライモンドの「争いは止めよ!」が割って入り、かくて「狂乱の場」に続くと言った具合。このあたりの繋ぎ方は、少し唐突なところもないではないが、巧妙な発想ではある。

 森谷真理の長丁場の歌唱と演技には、満腔の称賛を捧げたい。かなり無理な姿勢を取りながら歌う場面も多かったが、彼女にとってそれが何でもないことは、以前の「後宮よりの逃走」での激烈な演技で承知している。
 他の歌手たちも、立ち位置からして随分「合わせ」難かったのではないかと思うが、しかしみんな声が良く響いていたし、緊迫感も完璧であった。柴田真郁の指揮と、縮小された編成の読響の演奏も安定していて、バランスもいい。

 こういう「短縮オペラ」形式の上演は、楽譜作成の手間はかかるだろうが、オペラ普及のためには、意外に効果的なのではないか。90分という時間も、手頃である。

コメント

エドガルドは吉田「連」さんでした。
二期会や藤原歌劇団の主催公演より、日生劇場が制作した公演の方がクオリティが高い。これは資金力の差?入場料が安めの設定なのもうれしいです。

 森谷さんの長丁場の熱演はもちろん、読響の音の充実、柴田さんの歌を知り尽くした指揮など、聴きどころ満載でした。また、エドガルドの代役の吉田さんは初めて拝聴しましたが、伸びやかな高音で、役に適した好感の持てる歌唱だったと思います。7月の二期会公演にも出演予定のようなので、注目したいと思います。

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