2021-06

2020・10・22(木)チョン・ミン指揮東京フィルハーモニー交響楽団

      東京オペラシティ コンサートホール  7時

 当初の予定では名誉音楽監督チョン・ミョンフンが指揮する予定だったが、新型コロナ感染予防対策の「2週間待機」が不可能だったため、代わって子息のチョン・ミン(東京フィルのアソシエイト・コンダクター)が来日して指揮台に立った。「2週間待機」をもちゃんとこなした上で、とのことである。
 プログラムは予定通りベートーヴェン作品集だが、「ヴァイオリン協奏曲」(ソリストは服部百音)はそのまま演奏されたものの、「英雄交響曲」は「第5交響曲《運命》」に変更された。コンサートマスターは三浦章宏。

 この指揮者、実は私は聴くのが初めてなのだが、今日のレパートリーに限って言えば、重厚な低音の上にオーケストラをがっしりと構築し、古典的な造型を重視する音楽づくりを目指す指揮者、という印象か。
 「ヴァイオリン協奏曲」でも風格ある響かせ方が目立ち、コンチェルトというよりは、あたかもヴァイオリン・ソロのオブリガート付きのシンフォニーといった音楽の組み立てを求めていたかのようだ(そうではないと言っても、私にはそう聞こえたのだから仕方がない)。

 かたや「運命」では、冒頭のモティーフの「2回1組」の演奏におけるバランスの良さに感心させられた。たっぷりとした音で、フェルマータをかなり長めに採る。しかもそれらの「間」の取り方が、一定のリズム感を生み出していて、実に絶妙なのである。
 この均衡の良さはそのあとも続き、各楽章と、ひいては全曲を均衡性に富んだものとしている。コントラバスを強く響かせ、力感のある重低音で安定感を生み出す指揮は魅力だ。東京フィルもよくこれに応えていた。

 とはいえ、第2楽章は、あまりに生真面目に纏めようとしているせいで、音楽に感情の動きが失われている。
 後半2楽章でも、適度にクレッシェンドなどデュナミークの変化を挿入して劇的な起伏を狙っていたようだが、その演奏にはやはりどこか生真面目さが残っているので、なまじ構築のバランスがいいだけに、スリリングな昂揚感といった要素に不足する印象を生んでしまうのだろう。
 もし今後、彼がこれらのバランス構築を保ちつつ、その中にデモーニッシュな力を感じさせるような音楽をつくれるようになったら、いい指揮者になるだろうと思われる。

 チョン・ミンの指揮がこういう調子だから、コンチェルトでは、服部百音の演奏が、美しくはあるものの、不思議に何となく線の細いソロに聞こえてしまう。むしろ彼女がソロ・アンコールで弾いたイザイの「第2無伴奏ソナタ」の第4楽章が自由闊達で開放的で、よかった。こちらが彼女の本領だろう。

 「運命」の演奏が終ると同時に、禁断のブラヴォーを叫んだ掟破りの御仁がいた。コロナ規制以来、久しぶりに聞くブラヴォーの声だ。何だか懐かしいが、ギョッとした。やはり当節、未だちょっとヤバイのではないか。

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