2021-06

2020・10・18(日)プッチーニ:「トゥーランドット」

       神奈川県民ホール 大ホール  2時

 「神奈川県民ホール・オペラ・シリーズ2020」としての上演。
 共同制作として大分のiichiko総合文化センターと山形のやまぎん県民ホール、東京二期会、神奈川フィル、山形交響楽協会(山響)が名を連ね、大分でも今月24日に、山形でも31日に上演される。

 大島早紀子の演出と振付、佐藤正浩の指揮、神奈川フィルと二期会合唱団、赤い靴ジュニアコーラス。キャストはダブルの今日は2日目で、岡田昌子(トゥーランドット)、芹澤佳通(カラフ)、砂川涼子(リュー)、デニス・ビシュニャ(ティムール)、大野徹也(アルトゥム)、大川博(ピン)、大川信之(パン)、糸賀修平(ポン)、井上雅人(役人)の出演。

 岡田昌子は5年前に宮崎でリューを歌っていたのを聴いたが、その時のかなり「強い」歌い方から、この人はリューよりトゥーランドットの方に向いているんじゃないか、と書いたことがある(2015年5月17日の項)。それが今回やっと聴けたわけだ。所謂猛女のような性格のみで押しまくる姫君ではなく、愛らしさと無邪気さと、ひたむきさとをも併せ持ったトゥーランドット━━というイメージの歌唱と演技とで、これは成功していたと思う。
 リューの砂川涼子は、これはもう極め付きともいうべき歌唱と演技で、今回は何となく田舎の素朴な少女といったメイクだったのが印象に残った。

 注目対象の一つは、コンテンポラリー・ダンスの大島早紀子が10年ぶりに手がけた演出と振付にある。ダンスはもちろん、彼女の主宰するH・アール・カオス(白河直子他)。
 結論から先に言えば、このプロダクションにおけるダンスの使い方は、東京二期会の以前の上演「ファウストの劫罰」(2010年7月15日他)でのそれを上回り、「ダフネ」(2007年)に並ぶ成功だと思われる。

 合唱の個所では全てダンスが活用され、登場人物の心理の動きなどをイメージする活気ある舞台が繰り広げられる。トゥーランドットの凶暴な心理が動揺する場面になると、高く低く宙を舞うダンスがいっそう激しさを加える。彼女の演技にも、また群衆の一部の動きにも舞踊的な要素が応用されているのも面白いだろう。
 中国人たちの動きが舞踊的であり、カラフやリューらの韃靼人たちの動きはリアル、という対照も面白いが、━━ただそれゆえにこそ、ただ一人、カラフの、あの日本のオペラ歌手特有の、手を前に差し伸べる類型的な仕草が、何とも野暮ったい、能のない動作に見えて来る。

 佐藤正浩のテンポが速めで切れが良く、神奈川フィルともども活気のある演奏を繰り広げていたのが良かった。

 なお、最後の場面に入った個所(リコルディ版楽譜453頁)で、その1小節目の2つ目の2分音符をトランペットが「上げて」吹いた(そこで偶然トランペットがひっくり返ったことは別として)根拠を、どなたか教えて下さらないだろうか。あそこを「上げて」吹かせた演奏は、1959年に録音されたラインスドルフ指揮のレコード以外、絶えて久しく聴いたことがなかったからだ(1回くらいはあったか?)。

コメント

素晴らしい熱演でしたが、・・・。

小生も18日の公演を拝聴・拝見しました。第1幕ではまだエンジンが温まっていない感じがありましたが、尻上がりに調子が出てきて、なかなか充実した舞台となりました。

歌手については、リューの砂川さんが歌唱の見事さ、演技の自然さから一歩リード。タイトルロールの岡田さんは最高音が絶叫調となり、カラフの芹澤さんも五線から上の音域が少し詰まるようになることに加え、お二人とも少し演技が固い感じがあったのが惜しかったですが、総じて素晴らしい歌唱、まさに熱唱を聴かせてくれました。指揮の佐藤さんも神奈川フィルから美しい響きを引き出していたと思います。

舞台はとても美しく、女性らしい繊細なセンスを感じさせるものでしたが、バレエが多用されたことについては好き嫌いがわかれそうです。

「オペラとミュージカルの違いは何か。その境界線はかなり曖昧だが、オペラでは舞踊(バレエ、ダンス)は補助的に使用されるのに対し、ミュージカルでは舞踊が歌唱と並ぶ比重を占める。」と聞いたことがあります。その意味において、ミュージカルに近いとまでは言わないものの、バレエがかなり目立つ舞台であり、ダンサーの舞踊はとても質の高いものではありましたが、個人的には、一部、音楽への集中が妨げられる部分があったように思います。特に第3幕の最後で空中で舞う5人のダンサーは不要だったのではないかと思うのですが・・・。

トランペットを上げて吹いた件、浅学非才な小生には何もコメントできせん(ひっくり返ったのはよく分かりましたが・・・笑)。諸賢各位のご教示をお待ちしたいと思います。

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