2021-06

2020・9・1(火)田部京子が弾く!ベートーヴェン2大コンチェルト

      サントリーホール  7時

 「2大コンチェルト」とは? 「皇帝」と、もう1曲は「ヴァイオリン協奏曲Op.61」のピアノ編曲版(Op.61a)をさす、という解釈。なるほど。

 この2ヶ月半の間に2回ほど、田部京子が弾くベートーヴェンの協奏曲を聴く機会があったが、それらはゲスト・ソリストとしての演奏だった。だが今回のそれは5月2日の延期公演で、当初から彼女が主役としてコンチェルトを弾く演奏会として企画されていたものである。

 それもあってか、演奏の密度が、今回は段違いに濃い。清澄で気品のある表情はいつも通りだが、とりわけ音楽が実に温かく、しかも自然で、瑞々しいのである。これまで聴いて来た彼女の演奏の中には、時に端整でシリアスな表情が前面に押し出されることもあった(4年前のドイツの作品を集めたリサイタルでの演奏などその例だろう)が、今日は彼女の持つすべての美点がバランスよく総合されていた、と私には感じられた。

 「作品61a」なる不思議なコンチェルトは、第1楽章のカデンツァでの新機軸を別とすれば、ピアノ協奏曲への「遠慮がちの」編曲という印象を抑えきれないのだが、それでもフィナーレに入ってピアノが待ち切れずに己の個性を主張し始めるくだりになると、彼女の演奏も猛然、熱を帯びて来る。
 そして、プログラムの第2部での「皇帝」になると、毅然とした風格の裡にも優しさを湛えた彼女の演奏が、この王者然としたコンチェルトの中に潜む「愛」を浮き彫りにしてくれる、というわけだ。

 アンコールはベートーヴェンのソナタ「第18番Op.31-3」の第3楽章。これも美しい。何の作為的な仕掛けもない清楚なピアノでありながら、ベートーヴェンの持つヒューマンで素朴な「歌」の素晴らしさを、これほどしみじみと感じさせてくれた演奏も稀である。

 協演は飯森範親指揮する東京交響楽団。定期などの自主公演ではあれほど見事な演奏をするのに、「御座敷」公演になると、どういうわけか途端にゆるい演奏になるのが、このオケの悪い癖である。たとえば今日なども、「皇帝」のフィナーレへのブリッジ・パッセージでのホルン・・・・。

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