2021-06

2020・8・12(水)高関健指揮シティ・フィル ついに「ブル8」

      東京オペラシティ コンサートホール  7時

 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団は、公開定期演奏会再開の第1弾として、ブルックナーの「交響曲第8番」(ハース版)を取り上げた。

 周知のようにこの曲は、弦楽5部の他、3管編成の木管群、ホルン8(アシスタント1を含めれば9)、トランペット&トロンボーン各3、コントラバステューバ1、ハープ2、打楽器など━━を含む大編成である。それをここタケミツ・メモリアルホールの、必ずしも広いとは言えぬステージで敢行するというのは、舞台上の「密」という点において些か気にかかるところもなくはないが、楽団側としては当然それなりの見通しと確信に基づいて行なったことなのであろう。

 また客席に関しても、楽団側としては定期会員の席をソーシャル・ディスタンス方式で振り分け直すことをせず(間に合わなかったとか?)、「着席に関しては客に任せるので自由に移動して可である、ただし移動した場合は座った席を帰りがけに用紙に記入して報告されたい」と告知するにとどめていた。
 それに基づき自主的に移動分散していた会員もいたようだが、やはり自分の固有の席を断固として動きたくない人、動くのが面倒くさい人、ナニ大丈夫だよと思う人、なども多かったようである。日頃から「席の移動は断じて認めません」とレセプショニストたちから厳しくしつけられ(?)ていると、こういう時にも几帳面にそれを守る習慣はなかなか変えられないのかもしれぬ。

 まあ、コンサート会場は向き合って喋るような場ではないし、しかもマスクをちゃんと着けて静かに座っているだけだから、密接して座っていたって大丈夫のはずだ、という考え方も解らないではないけれど、しかし━━。

 さて、かんじんの演奏だが、常任指揮者・高関健の率いるこの大部隊(コンサートマスター・戸澤哲夫)の演奏は、なかなかの快演であった。
 弦は12型編成だったが、このあまり大きくない、よく響くホールでの演奏の場合には、それほど響きの薄さを感じさせることもない。ワーグナー・テューバを含むホルン群が比較的快調だったことも、この演奏を快く聴けた一因だっただろう。第3楽章で2回出て来るワーグナー・テューバを中心とした4小節のコラール(これは私も好きな個所だ)が実に深々とした響きで演奏されたのは嬉しかった。

 高関健の指揮は、オーケストラを怒号させるよりも、全ての楽器の響きの均衡に重点を置いた音楽づくりで、華麗な迫力よりもオルガン的な重厚さを狙っていたように感じられた。
 何よりテンポ設定が良く、特に第4楽章では一部の指揮者がやるような(楽譜にない)唐突な加速などの愚を一切行わないのが立派だ。第2楽章も他の指揮者に比べると遅いテンポだが、このテンポでこそ楽譜に指定された「アレグロ・モデラート」のイメージが生きるというものだろう。これらのテンポ感は、かつてのカラヤンのそれによく似ている。

 第3楽章冒頭の最弱音の弦は、他の指揮者があまりやらないような、極めて明確なリズム感を保ったスタイルで演奏されたが、これも「引き摺らぬように」というスコアの指定を生かしたものとして納得が行く。

 均衡重視の演奏のため、第4楽章のコーダの最後では圧倒的なひと押しという感にはやや不足していたものの、この大曲を僅かの弛緩もなく聴かせてくれたことには、特にコロナ禍に脅える今の日々、久しぶりの快哉を胸の中で叫びたくなるような気持をいだいたのだった。他のお客さんたちもそうだったのでは? 拍手は非常に熱烈だった。

 ※これを書いたあとで、ふと10年前に彼が日本フィルを指揮した「ブル8」のことを思い出し、記事(→2010年11月12日)を読み返してみたら、何か似たようなことを書いていたのに気がついた・・・・。

コメント

定期演奏会

お久しぶりでございます。
快演との由、ご同慶の至りです。
実は、私、悩んだのですが、本公演はキャンセルしました。同行者が内容変更に難色を示したため、倣うことにしたのです。私は、トスカもブル8も大好きですが、コンサートオペラを楽しみにしていたら、名前聞いたこともない長大なシンフォニーに変わって、食指動かなくなる人がいるのも理解出来るような気がします。ご時世ですからわがままは言えませんが、直前になっての大幅な内容変更は、定期演奏会の価値に疑問を持たれてしまう。何でもいいわけでもないでしょうから。

ついに「ブル8」という表題は全くもって共感しております。
シティフィルはたまにしか行きませんが、曲目と指揮者が高関さんならという思いで1階S席最後尾の真ん中あたりで聞いておりました。
東条さんの評を待っていました。
共感できてよかったです。
ただ、ラストもあれでよかったと私は思います。

2010年11月12日の日本フィル

当日のティパニはトラでした。日本フィルの元楽員でした。現役のときはよかったのですが、退団後は衰えていました。問題はその奏者がその後もトラで出たことです。トラのやりくりはパートごとにやっているのかもしれませんが、もしそうなら、身内への甘さがでたと思いました。

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