2021-06

2020・8・8(土)山本耕平テノール・リサイタル

     東京文化会館小ホール  7時

 「五島記念文化賞オペラ新人賞研修成果発表」のためのリサイタル。

 授賞そのものは平成26年だったが、この「賞」は、賞を出しっぱなしということにせず、賞を贈って海外研修を助成するからちゃんと勉強して来なさい、そして帰国したらその成果をちゃんと聴かせなさい━━という念の入った授賞方式であるところが特徴だ。そこで彼はマントヴァで修行して帰国、その発表会が今日行なわれた、という次第になる。

 前田拓郎のピアノのサポート(巧演)により歌われたのは、第1部ではトスティとレスピーギの歌曲、第2部ではモーツァルト、ドニゼッティ、ヴェルディ、グノーのオペラからのアリアと、最後にまたトスティおよびガスタルドンの歌曲。

 東京二期会の会員として、彼はすでに多くの舞台を踏んでいる。ただ、私は数年前の日生劇場での「コジ・ファン・トゥッテ」でしか彼の歌を聴いたことがないかと思うのだが、ともあれ久しぶりに聴く彼の歌唱が実に伸び伸びとして輝かしく、力に溢れているのには嬉しくなった。
 高音域に目覚ましい張りがあって、聴き手に快い興奮を与える。それでいながらレスピーギの歌曲のある部分でのように、低音域にも力と凄味を利かせるあたり、なかなかの声である。ただしソットヴォ―チェでのニュアンスに関しては、もう少しといったところだが。

 たった一つ気になったのは、モーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」の、ドン・オッターヴィオのアリア「恋人を慰めて」を、あまりに開放的かつ楽観的に朗々と歌い上げてしまったこと。その声の美しさには敬意を払うが、このアリアは本来こういう表現で歌われるべきものではない。たとえリサイタルで歌うにせよ、どんなアリアでもオペラの役柄の性格を研究した上で歌って欲しいものである。
 この第2部では、「リゴレット」の好色貴族マントヴァ公のアリアが圧巻の絶唱だった。期待の新星、まっすぐ伸びていただきたい。

 ドイツ語で歌ったのは「魔笛」の「タミーノのアリア」のみ、その他はイタリアものを中心として、オペラ・アリア集を歌った後にもイタリア歌曲(アンコールも「コーレングラート(カタリ・カタリ)」で大見得切って締め括ったあたり、やはりイタリア志向なのかなと思わされるが、コロナ禍さえなかったらこの7月には東京二期会の「ルル」(ベルク)でアルヴァ青年役を聴けていたはず。上演は来春に延びているが、それも楽しみに待つことにしよう。

コメント

8月8日山本耕平リサイタル

よく準備された公演。それでいて、たいへんリラックスしていた。山本耕平さんの声質・声域に合っている曲やご本人が好きな曲を五島記念文化賞に対するお礼の気持ちを込めて歌った印象。実際、アンコール前の挨拶で、このタイミングでリサイタルができることは稀有なことであるとして、その感謝と喜びが語られた。
前半のトスティ、レスピーギの歌曲は聴く機会が少なく貴重な機会だった。後半はオペラアリアの数々。魔笛はドイツ語なので異質。イタリア語とフランス語の曲を連ねると、さらにまとまりが出たのではないかと感じた。

二期会、藤原歌劇団の公演はタブルキャストなので、気になる歌手が出演する公演を聴きに行き、そこでまた、新しく気になる歌手を発見することの繰り返しが楽しいところ。山本さんは大沼徹さんが出演したホフマン物語(2013年)を聴きに行き、ナタナエルを歌っていて関心を持ったのが最初。ほどなくして、初のタイトルロールとして「ドン・カルロ」(2014年)を聴き、その後の山本さん出演のオペラ公演は殆んど聴いている。
リサイタルも良いが、やはりオペラ。山本さんが出演する次のオペラが早く上演されることを祈っている。
【補足】
山本さんの「ドン・カルロ」ではエリザベッタ役のソプラノがインフルエンザで急遽降板。もうひとつのキャストでエリザベッタを歌った横山恵子さんが代役に入り、無謀とも言える連日の出演。「後輩歌手のタイトルロールデビューを成功させる」との気迫、力強いサポートを感じ、非常に印象的な公演だった。実際、親子のような感じになったのも味わい深かった。

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