2021-06

2020・7・31(金)東京混声合唱団「コン・コン・コンサート2020」

       東京芸術劇場 コンサートホール  7時

 飛沫感染防止のために最も大きな影響を蒙っている分野の一つ、声楽関係━━その中でも合唱団の活動への制限は深刻だ。
 そうした中、東京混声合唱団が「歌えるマスクを開発」し、それを着用して演奏会を開いた。指揮は常任指揮者・キハラ良尚、ピアノは鈴木慎崇。

 この特別なマスクは、You tubeでもナマ配信されたからご覧になった方もおられようが、マスクというよりは、まるで秘密結社の団員みたいな、眼の下から胸まで届くほどの大きな「覆面」である。男声団員は黒服に黒い覆面、女声団員は白服に白い━━いや何か綺麗な模様は入っていたようだが━━、とにかく、何となく物々しい。

 だが実際の合唱を聴いた感じでは、声にもこもった響きは全くないし、歌詞も明晰に聴きとれる。いつもの「東混」の美しいハーモニーは、全く損なわれてはいなかった。久しぶりにナマで聴く混声合唱は、信じられぬほど陶酔的な美しさに溢れていたのである。
 この覆面、いやマスクにどんな秘密があるのかは知らないけれども、もしこれが飛沫感染防止対策に効果を発揮するのであれば、比較的少人数で歌える実力のある合唱団なら、ミサ曲でも「第9」でも、可能かもしれない。

 東京混声合唱団が、先んじてこのような実験的試みを行ない、しかも成果を上げたことは、称賛されるべきである。もっとも、今日の成功は、それが東混というトップのプロ集団だからこそだったかもしれないのだが。歌う側がこのマスクで疲れなかったかどうかは、今日のところは承知していない。
 プログラムは、すべて日本の合唱曲。上田真樹、越智志帆、山口龍彦、岩崎太整、宮崎朝子、三宅悠太、木下牧子、信長貴富らの作品がリストを飾っていた。

 ━━と、ここまではいい。
 だが残念なことに私は、最初の3曲を聴いただけで、うんざりして席を立たなければならなかった。何故か? 私は1階P列で聴いていたのだが、背後の2階席最前列にセットされていたプロジェクターが発する物凄いノイズに、到底耐え切れなくなってしまったからである。

 その機械は、ステージ上のスクリーンに映像を投映するためのものだったらしい。そのノイズは、合唱団のピアニッシモをかき消すほど大きく、しかも特定の高さの発振音を伴っていたのだ。そのため、折角の合唱団の繊細なハーモニーは、惨めに混濁させられてしまっていた。所謂「補聴器のノイズ」よりも更に大きな雑音だったのである。
 この酷い音には、一瞬たりとも耐えられない。音楽を大切にするべき時と所で、こんな雑音を放置しておく制作者は、無神経にもほどがあろう。事前にテストをして確認しなかったのか? そこらのいい加減なイヴェンターならいざ知らず、天下の名門・東京混声合唱団ともあろうものが・・・・。

 なお、自宅に戻り、第2部の終りの方をyou tubeで視てみたら、舞台上のスクリーンは既に撤去されていた。コーラスは、実に美しく聞こえた。第1部の最後の2曲で何か映像的な趣向があると、帰りがけに受付の事務局から聞いた話は本当だったようだ。
 それを事前に知っていたら、不快なノイズに悩まされぬ第2部だけを聴きに行けばよかった。

コメント

 私はユーチューブによる生中継を聴きましたが、プロジェクターの発する音には気付きませんでした。改めてアーカイブを注意深く聴いたところ、確かに聞こえますね。お客さんを500人以下に抑えた東京芸術劇場では、さぞかしよく響いていたことでしょう。2018年の「東混八月のまつり」で、演出のため舞台上に置かれた照明器具から常時出ていたノイズに不快感を抱いたことを思い出しました。
 ともあれ、ひょうごプロデュースオペラ合唱団に続き、関東地方の合唱団の中では先陣を切っての上演に敬意を表します。今後も最新の研究成果を積極的に取り入れながら、プロアマ問わず日本中の合唱団に希望をもたらす活動を、東混に期待しています。

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 先日(21年3月)の杉並の演奏会でも、この7月のコンサート程でないのでしょうか、微妙に、でも結構、聞こえる音で、「スースー」というか、「サーサー」というか、何か空調なのか、音響、リモート関係なのか、ノイズ音がコンサート最初の方でして、「えっ!また‥」と思いました。
 その後は自分が慣れたのか、関係者が音を止めたのか、気になることはなかったのですが、東条先生の仰るように、演奏現場でノイズ音そのままで演奏に臨んでしまうのはプロとして、どうなのかと思います。
 急なアクシデントで、どうにもならないとしても、主催またはホール、原因にかかわる方から説明があってしかるべきでしょうし、演奏後、HPなどで、説明やひと言、お詫びなどがあるべきだと思いますし(見た限り、投稿時、現在(3/11)、HPには特にないようですが‥)、それが聴衆を大切にする、ということなのだと思います。

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