2020-08

2020・6・28(日)東京交響楽団、公開定期の再開2日目

     ミューザ川崎シンフォニーホール  2時

 東京響は、すでに先週金曜日に、聴衆を招いての定期演奏会をサントリーホールで再開している。

 今日は同一プログラムでの川崎定期だ。曲目は当初の予定通り、ベートーヴェンの「プロメテウスの創造物」序曲と「ピアノ協奏曲第3番」、メンデルスゾーンの「交響曲第3番《スコットランド》」。
 ただし指揮者のユベール・スダーンとピアニストのイノン・バルナタンの来日が不可能になったため、飯守泰次郎と田部京子がそれぞれ見事に代役を務めた。コンサートマスターは水谷晃。

 管楽器奏者たち以外は全員━━指揮者もソリストもマスク着用だが、特にマエストロ飯守は黒マスクをかけての登場で、2CBの遠い席から見ると、何となく厳めしく不気味な迫力を感じさせる。
 そして、その迫力も見かけだけではない。音楽づくりも強烈で、これほどドラマティックな「スコットランド」は聴いたことがない、というほどの演奏になっていたのには度肝を抜かれた。荒々しく鋭角的なアタック、激しいデュナミーク、ティンパニの豪打による強いリズム感など、恰もメンデルスゾーンの交響曲をベートーヴェンの流れを汲む強靭な世界として位置づけるような解釈を、些か戸惑いつつも興味深く聴かせて貰った。

 冒頭の「プロメテウスの創造物」序曲の序奏でも、豪快な音の構築と遅いテンポが見事であり、しかもそれらの和音の間につくられた長い休止が全く緊迫感を失っていない、という演奏にも感服させられたのである。
 この序曲は、あっさり演奏されると拍子抜けさせられるものだが、今日はそれが終った時には爆発的な拍手が巻き起こった。演奏に籠められた並々ならぬ力を、聴衆もまっすぐに享け取ったのだろう。

 続くコンチェルトでも、黒マスクの飯守と東京響はどっしりと構えた演奏を繰り広げた。それに呼応した白マスクの田部京子のピアノは、まるで黒騎士と貴婦人の対話の如き━━飯守の黒色と、田部の輝かしい清純な白色とのコントラストをイメージさせるような音楽を感じさせたのである。久しぶりに聴いた堂々たるベートーヴェンは、実に懐かしく、快かった。

 聴衆は700~800人の入りと見えたが、確認したわけではない。定期会員の中にも、未だ外出やホールに集まるのは怖いとかで、欠席する人も居ると聞く。各々両側1席ずつの間隔を置いてのソーシャル・ディスタンス方式着席で、マスクも着用。黙々、粛々も例の如くだが、今日の拍手は、実に強く、そして大きかった。東京響に対する「わが町のオーケストラ」という思いも籠っているような拍手に感じられたのだが、どうだったろう。

 なお、「終演後に通路での密状態を避けるため、何々階のお客様から順番に・・・・何階のお客様はしばらくお待ちを」という意味のアナウンスが為された(先週の東京フィルでもそうだった)が、これは事実上、意味がない。構わず退席して行く人もいるし、それに第一、そんなにうるさく言われなくてもみんな「密」を避けるための心構えは充分に持っており、歩く時には自らちゃんと互いに間隔を取りあっているからである。

 東京響は、ネット配信の多用も含めて、苦しい中でも企画は積極的だ。7月の定期等では、ジョナサン・ノットが映像出演して指揮をするという超風変りの、一種実験的なスタイルで開催されることが、すでに同楽団のサイトに発表されている。

コメント

4カ月ぶりの生音!

ご無沙汰しておりますが、お元気でしょうか。依然、在宅勤務が続いており、コロナ太りに悩む中(笑)、小生も東響の川崎定期を拝聴しました。2月24日の日本センチュリー響以来、実に4カ月ぶりのコンサートでした。

オケは、席の間隔を広げていましたが、小編成のオケがゆったりと配置されたという感じで、それほど違和感はありませんでした。さすがに指揮者のマスク着用は難しいだろうと思っていたのですが、指揮者、ソリストも含め(管楽器を除く)全員がマスク着用。団員の皆さんにとって指揮者の表情が分かりにくかったのではないかと思うのですが、これはガイドラインを遵守した結果でしょう。

久しぶりのオケの生音でしたが、聴衆が少なくてよく響くためか、音量面の不満は一切なく、アンサンブルの乱れも感じられませんでした。強いて言うなら、久しぶりの実演で少しオケの音色がこなれていないというか、硬質なイメージがありましたが、気のせいだったかもしれません。とにかく4カ月ぶりの熱演に大満足いたしました。

個人的には、今回の運営であれば、聴衆相互間の感染リスクはかなり低く(一般的な生活とさほど変わりないレベルに)抑えられると感じました。海外からの渡航制限についても時間がたてば緩和されるでしょうから、あとは、大編成演奏の再開可否、オペラ・合唱付き作品での飛沫感染対策、そして、聴衆半減による収支悪化対策あたりが残された課題となりそうです。

小生としては、今後の主催公演は一旦すべて払い戻し、少ない聴衆数を踏まえて価格を改定したチケットを再販売してはどうか、さらに払戻の時期を極力遅らせる(場合によっては、法定利息支払も視野に入れる?)ことができれば、一定のキャッシュフローが確保できるのではないか、と思うのですが、未確定な要素が多い中、チケット代を値上げして再販売することはそう簡単ではないのでしょう。ロビーで大野楽団長にお目にかかりましたが、前例のない事態の中で大変ご苦労されている様子が窺われました。

8月から歌舞伎座が公演を再開します。市松模様の座席配置で1日4回公演、1公演1演目で上演時間50分程度の短いもの(幕間なし)とし、チケット代は通常の半額程度に設定。歌舞伎の場合、複数演目で上演時間3時間超を1日2回公演するのが普通なので、かなり大胆な公演形態見直しですね(これだとなんとか収支トントンになるのでしょう)。関係各位の大変なご尽力に敬意を払いつつ、7月末のサントリー定期を(指揮者の映像参加という斬新なアイデアも含め)注目したいと思っております。

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6月28日裏番組:東京文化会館大ホール テノールの饗宴

それぞれが主役を歌っているような実力あるテノール4名の声の饗宴が楽しい公演でした(東京音楽コンクール入賞者:村上さん/与儀さん/宮里さん/小堀さん)。
クラシックの歌のコンサートの再開としては初公演ということで、出演者・聴衆・スタッフの皆が緊張するところ。冒頭、ベテランの村上さんが登場して挨拶、そして注意事項や希望する段取りをソフトに紹介。緊張がやや解けたところでコンサート開始となったのは良かったと思います。
前半はオペラ・アリアから各自が得意な曲目を入れ替わり立ち替わり歌い、後半はオペラ以外の作品から「愛」の歌を歌う形(各2曲ずつ)。
後半も途中解説があり、緊急事態宣言下の各自の過ごし方が紹介されたことは共感を誘うものでした(村上さんのMCが上手い。歌手だから当然声も良いし…)。
アンコールも楽しい競演で適度に盛り上がってお開き。
私としては小堀勇介さん目的で聴きに行き満足しました。開幕したのが彼だったのも嬉しいことでした(やや緊張しているのかなと感じましたが、本人のトークでは「コンサートの開幕担当、久し振りの聴衆の前での歌の披露ということで感極まった」とのこと)。
全員が前半はタキシード、後半はラフなジャケット&パンツ姿…と歌に合わせた雰囲気作りは工夫がありました。
本来は5月28日に小ホールで行う予定だった公演を丸1ヶ月後の大ホールに変更し、座席の距離を確保しての実現。そんな方法があったのかと感心するとともに、スムーズな歌手の入退場の入れ替わりやトークを入れた進行など、相当に準備したと感じられる公演でした(社会的距離を保つため、舞台の立ち位置をしっかり決めている)。
歌手にうまく寄り添う江澤隆行さんのピアノ伴奏の心地良さもこの公演の成功に一役買った印象。
当日はNHKの取材が入り、7月6日のニュースウォッチ9で、びわ湖ホールの取り組みとともに紹介されました(ちょっと分かりにくいまとめだったのは残念)。
テレビなどの映像や新聞などの活字で広くクラシック公演再開の取り組みを紹介してもらえるのはありがたいこと。

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