2021-06

2020・6・26(金)大阪フィル、公開定期演奏会を再開

      フェスティバルホール  7時~8時15分

 「大阪4オケ」のトップを切って、大阪フィルハーモニー交響楽団が聴衆を入れた定期公演(6月定期)を再開した。指揮には、当初の予定通り、かつての音楽監督で現在は桂冠指揮者となっている大植英次が登場。

 ただし新型コロナ感染予防対策の一環としてオーケストラの編成は縮小され、当初予定されていた「ウェストサイドストーリー」や「ツァラトゥストラはかく語りき」などの大編成作品の替わりに、ベートーヴェンの「第4交響曲」と「第5交響曲《運命》」が休憩なしで演奏されるということになった。とはいえ「4番」は弦12型、「5番」は弦14型という編成を採っての演奏だから、通常公演と同じようなもので、プログラム変更という不満感はそれほど強くはなかろう。

 奏者の配置は、広いフェスティバルホールのステージをいっぱいに使って大きく間隔が取られ、弦の前列は舞台前方ぎりぎりまで迫る。上手側の高いバルコニー席から一望したところでは、オーケストラが異様に広く拡がっているという印象だ。昔、カラヤンの映画でこんな配置を見たような気もするが━━。

 弦楽器奏者とティンパニはマスク着用、「5番」のフィナーレにしか出番のないトロンボーンとコントラファゴットの奏者も、待っている間はマスクをして座っていた。
 指揮者の大植はマスクなしだが、コンサートマスター(須山暢大)らと握手をする時にはその都度白い手袋をはめるという念入りな作業で、場内からは笑いが漏れた。

 一方、客の側はというと、これは例のごとくアルコールでの手洗い消毒と非接触機器による体温測定を経て入場、マスク着用を推奨される。当日売りは行わず、定期会員と招待客のみだったが、入りは見たところ600~700という感か。
 席の変更は先着順とか聞いたが、しかし、間隔を1人ずつ空けての着席案内が上手く出来ていて、バルコニーから見ると綺麗に客席が埋まっているように感じられる。バー・カウンターも開かれていないので、ロビーもだだっ広く感じられる。
 定期公演の際にロビーで行なわれている福山修事務局次長のプレトークも、今回は無し。客は黙々と、粛々と出入りするので、やはり何となく寂し気な雰囲気は拭えないだろう。

 さて、久しぶりに聴いた大植&大阪フィルの演奏。音楽そのものは良いのだが、実は初めのうち━━最弱奏で開始された「4番」の序奏あたり、オケの音色の硬さも含め、響きがステージ中に散らばり、バラバラなアンサンブルに感じられたのには愕然とさせられた。
 こちらの席の位置や、ほぼ3か月間の活動空白のあったオーケストラの傾向などを別にして考えても、これは少々異様だった。ステージいっぱいに音が沸き上がるというよりもむしろ、ステージのあちこちからバラバラと音が聞こえて来る、という感だったのである。あまりに席の間隔を空けてのオーケストラ配置では、このような傾向になってしまうのか・・・・と、オケの配置の重要性を改めて思い、暗然としたものだった。

 ところが、こういった欠点が、驚くべきことに、演奏が進むうちにみるみる解消して行ったのである。「4番」の第4楽章あたりになると、すでにしっとりとまとまったアンサンブルがつくり出されていた。そして、「5番」に至っては十全なバランスと音色でまとめられた━━まとまり過ぎていたと言っていいほどの━━重量感たっぷりの演奏になっていたのだった。

 これは、このような配置にもかかわらず、オケの楽員たちが互いの響きを巧く聴きあって、この場に相応しいアンサンブルをつくって行ったのだろうと思われる。さすがはプロである。また、あまり細かく振らずにオケを制御していた大植の指揮も、好結果を生んだのかもしれない。「5番」終楽章のコーダなどでは、火の出るような推進性と盛り上がりを感じさせたのであった。

 久しぶりに聴いた大植のベートーヴェン、極めて正面切ったストレートな音楽づくりだ。もう少し暴れてもいいのではないかと思われるくらいだったが、━━あるいは明日の2日目の演奏では、もっと自由さが生まれて、面白いことになるかもしれない。

 飛沫感染防止のため、客には「大きな声は出さぬよう」と指示があったものの、しかしオケの熱演に客も拍手だけでは物足りなくなったと見え、ブラヴォーの声も、控えめながら少しは飛ばされたようである。

 終演後に楽屋で会ったマエストロ大植はかなり体型と顔に貫録が増した印象だったが、人づてに聞くところによれば、帰国してすぐ2週間、ホテルに例の「罐詰」状態にされ、毎日カツ丼やら何やら、栄養価の高いものばかり食べていた所為だと。真偽のほどは定かではないが。

コメント

お久しぶりです。このコンサートの2日目と前日の京響に大分から行く予定でチケットを取って楽しみにしておりましたが、京響は中止、大フィルは曲変更。残念ながら両方とも払い戻してもらい、関西遠征はまたの機会にしました。
私としては、楽員がそんなに離れて座ること、マスクや手袋まですることは不要と言い切りたいところですが、そうはいかないでしょうね。仰るようなアンサンブルの悪さとその建て直しの素晴らしさ、興味深い事です。ファンにも音楽家とスタッフの方々にもまだ暫く普段とは違う苦難が続きそうですが、少しずつ光が見えてきたのは本当に有難いです。

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