2020-05

2020・2・21(金)METライブビューイング「アクナーテン」

     東劇  6時30分

 フィリップ・グラスのオペラ「アクナーテン」、昨年11月23日のMET上演ライヴ映像。
 作品自体は1983年のもので、1984年にシュトゥットガルト州立劇場で初演されていた。ただし今回のフェリム・マクダーモット演出によるプロダクションは、イングリッシュ・ナショナル・オペラとロサンゼルス・オペラのために制作されたもの (originally created by)と、METのSEASON BOOKには記載されている。

 題名の「アクナーテン」とは、紀元前14世紀の古代エジプト第18王朝のファラオであるアクナーテン(=太陽神アテンの魂 アメンホテップ4世の別名)を指す由。彼はそれまでの多神教を廃し、一神教を推進した王だとのこと(国内パンフレット掲載の前島秀国氏の解説に由る)。
 この上演では、そのアクナーテンをアンソニー・ロス・コスタンゾ(CT)、その妻ネフェルティティをジャナイ・ブリッジス(Ms)、太后ティイをディーセラ・ラルスドッティル(S)、アメンホテップ3世(亡霊)をザッカリー・ジェイムズ(Bs)他が歌い演じ、女性指揮者カレン・カメンセックが指揮した。
 この演奏の見事さ、歌手陣の素晴らしさは驚異的である。

 フィリップ・グラスの音楽には、私も一頃は猛烈に凝ったものだが、しかし最近は、その熱も少々冷めつつある、というのが正直なところだ。
 一方、舞台の方は目を奪う壮麗さで、トム・パイの美術&プロジェクション・デザインと、ケヴィン・ポラードの衣装デザインが凄い。ただし人物の演技は、演技というよりは象徴的な動作の連続で、すこぶる重厚な迫力を感じさせる。とはいうものの、それらとて正味2時間20分の長さを保たせるのは、そう簡単なことではない。

 しかし、例えば第3幕終結に近い「反乱の場」と「アクナーテンの没落の場」におけるように、次第に量感を増して行くミニマル・ミュージック特有の押しの強さや、ゆっくりだが不気味な迫力を示す人物の動きなどにより主人公の壮絶な悲劇が描かれるあたりはやはり物凄い。そういうところは、まさにフィリップ・グラスのオペラの本領と言えるだろう。

 なお、幕切れのエピローグの場面で、時代を現代の歴史博物館にスリップさせるという洒落た手法が採られているのが面白い。
 全編で繰り返されるジャグリングは、派手な見ものだが、これはまあ、ミニマル・ミュージックの音のイメージを視覚化したもの━━程度の意味しか、私には感じ取れなかった。
 終映は10時頃。

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