2020-04

2020・2・13(木)山田和樹指揮読響&ポゴレリッチ

   サントリーホール  7時

 首席客演指揮者の山田和樹が、グリーグの「二つの悲しき旋律」、シューマンの「ピアノ協奏曲イ短調」、ドヴォルジャークの「交響曲第7番」を指揮。シューマンの協奏曲では、あのイーヴォ・ポゴレリッチがゲスト・ソリストとして登場した。

 ポゴレリッチが弾くコンチェルトは、ナマではショパンの「2番」を、デュトワ指揮フィラデルフィア管とのショパンの「2番」(☞2010年4月28日)と、ゲオルギー・チチナゼ指揮シンフォニア・ヴァルソヴィア(☞2010年5月3日)、ラフマニノフの「2番」をカエターニ指揮読響(☞2016年12月13日)とのそれぞれ協演で聴いたことがある。
 いずれも「物凄い」演奏だったが━━今回のシューマンも、「ロマン派の詩人」などというこの作曲家のイメージを根こそぎ吹っ飛ばしたような解釈の演奏で、衝撃を受けたり、感嘆させられたり、甚だスリリングな体験をさせてもらった。

 何しろこれは、ふだん物静かな人(シューマン)が突然声を荒げて叫んだり怒号したり、凶暴で攻撃的な性格を見せるような演奏なのである。凄まじいアクセントとフォルティッシモが随所に爆発し、こちらはそのたびごとにぎょっとさせられる。しかもそれが凄愴で、孤高の悲愴感といったものを生み出しているところに、ポゴレリッチの独特の境地があるだろう。

 第1楽章の指定「アフェットゥオーゾ(優しく)」も、第2楽章の「グラツィオーゾ(優雅に)」も、ここでは無視され、前者はアジタート(激烈に)、後者はスケルツァンド(諧謔的に)とでもいった演奏になっているところも面白いというか、唖然とさせられるというか。
 同じ楽譜を使いながらもこれだけ異なった音楽になることがつくづく興味深く、スコアというものがいかに「あてにならぬ」ものであるかを痛感させられることになる。

 だが私はここで、かつてポゴレリッチの演奏について書いた言葉をもう一度繰り返したい━━この大胆不敵で、作曲者をも畏れぬ感性は、激しく攻撃されて然るべきだが、しかし、それと同じ数の称賛を受けても然るべきだと思う、と。
 ただ、もうひとつ穿った見方をするなら、ポゴレリッチはこの曲に、シューマンがその晩年に陥る精神的な危機を先取りした解釈を施したのではないか、とも言えるかもしれないのだ。

 そのポゴレリッチの音楽に、山田和樹が、実に巧く合わせる! テンポだけではなく、例えば第1楽章の第134小節以降の全合奏を、ほとんど怒号同然の攻撃的な最強奏(スコア指定はフォルテ1つのみ)にして、ポゴレリッチのソロに呼応する。
 それでいて、カエターニやチチナゼのようにポゴレリッチに「かしづく」のではなく、デュトワのように皮肉めいた闘いを仕掛けるのでもなく、随所に山田の持味たる微細なニュアンスを散りばめる指揮を聴かせる、という巧妙さなのだ。これに応えた読響(コンサートマスターは長原幸太)も見事だったというほかはない。

 冒頭のグリーグの小品でも、山田和樹のエスプレッシーヴォの精妙さは群を抜いていた。明確なアクセントで入りながら、次の瞬間にはふっと力を抜いて最弱音にするというニュアンスの豊かさ。読響の弦もそのあたりが実に巧い。アンコールで演奏したアザラシヴィリの「無言歌」なる弦楽合奏の小品でも、その特徴が表れていた。

 そしてなお、ドヴォルジャークの「第7交響曲」でのアクセントの強靭さとメリハリの豊かさは、彼が海外で良いオケを指揮していることを思わせる。第3楽章では、それらの良さすべてが集約されていたように感じられたのだった。

コメント

定期会員は。。

2/11に横浜で聴きました。同じような感想です。何はともあれ、伴奏に山田さんを得たことは、とても良かったです。これからは、ずっとポゴレリッチからのご指名がくるのかしら?さて、満員の会場は、比較的高齢の定期会員とおぼしき方々が大勢いました。ポゴレリッチの演奏をびっくりしたように聴いていたり、途中で寝てしまったりと、聴衆さまざまでした。

11日みなとみらいにて

ポゴレリッチ、3楽章になってようやく芯をとらえてしっかり聴けた感じでしたが、とくに強奏部では指先に鉛でも入っているかのように、前に力が入った音を出すと感じました。力強いのはよいのですが、その分はじくような軽やかさや、あとに残るロマン的な響きがない。健康的ではない感じ。でもそんなポゴレリッチを聴いてみたかったので、聴けてよかったです。
読響は、グリーグでの、すっと音が沸き上がってくる感覚や、ドヴォルジャークでの熱い演奏、時々突き刺さるような、切れ込む弦の音。良いときの読響が聴けて満足でした。そして、ヤマカズ氏ならではともいえる、アザラシヴィリのアンコールも良かったです。

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