2021-06

2020・1・25(土)ボーダーレス室内オペラ「サイレンス」

      神奈川県立音楽堂  2時

 「サイレンス」というオペラ━━実に感動的な舞台作品を観せてもらったという感。

 作曲は映画音楽系のアレクサンドラ・デスプラ。
 原作は川端康成の「無言」で、これをデスプラと、演出のソルレイとが台本化し、演奏時間90分ほどの作品に仕上げた。昨年2月にルクセンブルクで世界初演され、次いで3月にパリ初演されている。今回が日本初演である。
 演奏は10人編成の「アンサンブル・ルシリン」で、指揮はデスプラ自身が執った。出演歌手はジュディス・ファー(S)、ロマン・ボックラー(Br)、ローラン・ストッカー(語り)。

 器楽アンサンブルは舞台の真ん中ほどの位置に横一列に並び、演技は舞台前面で行なわれる。
 逗子か葉山の近郊に住む、既に物言わぬ状態にある小説家の家という設定。彼が背をこちらに向けてソファに座り、その沈黙を破らんものと、訪れた男が努力を重ねるものの、ついにその沈黙の圧倒的な力の前に敗北を認めざるを得なくなるという物語だ。これに、タクシーの中に現われる無言の女の幽霊の話が絡む。

 音楽には日本音楽の手法が少し取り入れられているが、基本的には西洋音楽のスタイルを保ち、それがむしろ透明な美しさを生み出している。
 だが、本音を言えば私としては、音楽そのものの力にというよりは、題材と、台詞と、その音楽の「音」の中に満ち溢れる「沈黙」あるいは「静寂」の物凄さに打ちのめされた、と言った方がいいかもしれぬ。

 上演は3時30分頃に終る。不思議な余韻を感じて、何かホールを去りがたい思いだったが(こんなことは初めてである)次の予定もあるので失礼した。その後には作曲者を含めたトークが行われたはずである。

コメント

京都で拝見しました。

 なかなか言葉にし難いのですが、音楽、演技、舞台上方での映像など、とても印象深いオペラでした。映像はちょっと個人的に懐かしい映像もあったり、個人的に不気味に感じる映像もあったりしたのですが、「ありし日の過去」を表現しているのか、どうなのか(個人的な印象であり、違うのかもしれませんが‥)、いろいろ考えを巡らしながら興味深く拝見しました。
 不思議な感じ、かつ印象的な音楽に加え、演者の動きも、静かで深く、全体的に、東条先生も仰るように、私も普段と異なる「余韻」を感じ、何か、京都という公演地のシチュエーションにも合致しているようにも感じました。より理解を深めたいので、是非とも再演を期待したいと思います。

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