2021-06

2020・1・11(土)日本オペラ協会公演 歌劇「紅天女」

     Bunkamuraオーチャードホール  2時

 原作および脚本・美内すずえ、作曲・寺嶋民哉、指揮・園田隆一郎、演出・馬場紀雄、特別演出振付・梅若実玄祥、合唱・日本オペラ協会、管弦楽・東京フィルハーモニー交響楽団、出演・小林沙羅(阿古夜×紅天女)、山本康寛(仏師・一真)他。

 原作は「ガラスの仮面」とのこと。会場で顔を合わせた何人かの業界の女性たちに訊いたら、みんなこれを読んで詳しく知っているという。中には、概要を慌ただしく説明してくれた新聞記者や、ワタシたちにとっては「たしなみ」ですから、と艶然と微笑んだ音大教授もいたくらいだ。
 あいにく私は少女マンガについては全く知らないし、興味もない。ましてや「ガラスの仮面」などという大ベストセラーについては、どこかでその名を目にしたような・・・・程度の認識しかないのが正直なところだ。

 だが、それはまあ、どうでもいい。ここではあくまで、ひとつの新しい創作オペラとして聴き、観るだけである。プログラム冊子に室田尚子さんが寄稿している「オペラと少女マンガの蜜月が始まる」という一文の趣旨も大いに結構であろう。もしかすると、少女マンガの世界は、オペラ化するには絶好の素材なのかもしれない━━。

 しかし今回、実際に第1幕だけを聴いた印象を正直に言わせてもらうなら、ストーリーは別として、失礼ながら音楽が━━美しいけれどもつまらないのだ。言葉にただフシを付けただけでは、民謡的な歌曲ならそれでいいけれども、大きな劇的起伏を必要とするオペラにまで達することはできないだろう。
 3幕構成で、進行表には演奏時間が各50分、60分、70分と発表されていた。

コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

 私も、漫画の方は存じ上げないのですが、このオペラ自体は「後南朝」と言われる南北朝の合一後の、南朝勢力の衰亡を背景として描かれた、オリジナリティの高い物語だったように思います。
 主役の小林、山本両氏はかなりの歌唱の分量を、熱意をもって歌いきったように思いました。また、一説に室町時代に興隆した能楽の祖、世阿弥は南朝との繋がりが‥という説もある訳ですが、能の現代における第一人者のお一人、梅若実玄祥師が演出振付で素晴らしい表現を付与されていたことも印象に残りました。
 ただ、東条先生も仰るように、音楽は作曲家に技能、力量があるが故に、かえって音楽が長すぎ、聴く側一般にはポイントが掴みづらくなってしまったように、個人的には思いました。そして、その背景には台本に関することもあるように思いました。
 確かに、人生の意義とか、愛情とか、作者の方は並々ならぬ想いと意欲で、世界観溢れる台本をお書きになったと思います。それは大変すばらしい内容なのですが、ある意味、人生哲学、宇宙観を語りすぎる部分も多く、戯曲としては登場人物の言葉が何か演劇のセリフらしからぬ、長いものになってしまったように思うのです。個人的な意見ですが、もう少し、内容を絞り、セリフも簡潔で自然な流れの方が良かったように思いました。
 このオペラは、スーパーオペラと銘打っていた訳ですが、思い出されるのは、やはり、当代・先代の市川猿之助丈のスーパー歌舞伎であり、漫画とのつながりでいえば、当代の「ワンピース」、そして、東京では当代が出演した「NARUTO」もこれに当たるものでしょう。また、川口晃平師(お父様は漫画家の、かわぐちかいじ氏)を中心とした、「VR能-攻殻機動隊」も、こうした流れ(アニメ、漫画に取材、関連)に入る公演と捉えることができるのかも知れません(個人の意見です。)。
 簡潔に言えば、今回のオペラや、以上の諸公演では、漫画やアニメのファン、特に若い方が多かったわけですが、実は、私がこうした公演でとても清々しいこととして嬉しく感じたのは、彼ら若いファンの方々が、とても真摯な姿勢で、オペラ、歌舞伎、能といった世界に向き合おうとしている姿が多く見られたことです。
 昨今、迷惑なブラボーやバンバン周囲を顧みない拍手をしてしまうクラシックファンが増えている訳ですが、そうした思いあがった状況とは違い、彼ら漫画、アニメのファンが、原作者、そして、演者の方々への確実なリスペクトを持ち、考えつつ、なじみないオペラ、歌舞伎、能の理解に真剣に向き合い、あたかも手探りのように自らの理解を少しずつ確かめながら、周囲にも控えめに拍手を送っている姿は、何か新鮮で、真の芸術鑑賞の姿勢の在り方そのものでもあると感じました。また、彼らの漫画、アニメへの関心や取り組みも、そうした良い在り方を追求しようとしているのではないか、とも類推できるかのようでした。
 芸術鑑賞とは何か、クラシック・ファンの中で上記に該当する方々は、自己を顧みる必要があるのではないか、と改めて考えた公演でもありました。

 上記「後南朝」の部分ですが、「南朝の後期」と書いた方が良かったかもしれません。お詫びして訂正いたします。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | HOME |  »

























Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

ブログ内検索

最近の記事

Category

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」