2020-04

2019・12・1(日)ヘンデル:オペラ「リナルド」

      北とぴあ さくらホール  2時

 「北とぴあ国際音楽祭2019」の最終日、ヘンデルの「リナルド」の2日目を観る。有名なアリア「私を泣かせて下さい」を第2幕に含むオペラである。

 寺神戸亮のヴァイオリンと指揮、レ・ボレアードの演奏、佐藤美晴の演出。
 歌手陣は、布施奈緒子(キリスト教徒軍総司令官ゴッフレード)、フランチェスカ・ロンバルディ・マッズーリ(その娘アルミレーナ)、クリント・ファン・デア・リンデ(キリスト教徒軍の将軍リナルド)、フルヴィオ・ベッティーニ(エルサレムの王アルガンテ)、湯川亜矢子(ダマスカスの女王で魔法使のアルミーダ)ほか。
 オーケストラをステージに載せ、歌手たちはその前で演技を繰り広げる形で、ほぼセミステージ形式上演と言ってもいい。

 オペラは十字軍時代、キリスト教徒軍の英雄リナルドを主人公に、最後にキリスト教徒軍が大勝利を収め、敗れたエルサレム王アルガンテとダマスカス女王アルミーダが前非を悔いて改宗する━━という内容。当時のオペラによく見られる、いかにも西欧のキリスト教徒側に都合のいい物語だ。
 ただこちら「リナルド」には、ハイドンの「アルミーダ」などとは違い、異教徒の指導者たちを単に残虐な者たちとしては描いていないという特徴がある。いずれにせよ、キリスト教とイスラム教の対立がますます深刻な問題となりつつある今日からすれば、これまでとは異なった解釈が加えられても然るべきドラマではあろう。

 ただし今回の上演は、特にそういう政治的なところには的を置かずに、ストレートに取り扱い、登場人物の性格、男女の心理の機微などを浮き彫りにすることを狙ったようだ。アルミーダとアルミレーナを1人の女性の両面を表わす存在として解釈したのは、あの「タンホイザー」でのエリーザベトとヴェーヌスの解釈にも似て興味深い。
 ともあれ、この小さな演技空間では、ドラマとしてあれこれ解釈を織り込むのは、どだい無理と申すものであろう。

 歌手の中では、アルミーダ役の湯川亜矢子が発音の明晰さ、イタリア語歌唱のメリハリの良さ、妖艶な演技表現などで際立っていた。彼女は昨年の「ウリッセの帰還」でもペネローペを歌って素晴らしかったという記憶がある。

 1995年以来のほぼ毎年、時にはモーツァルトのオペラなども含みつつ、バロック・オペラを集中して取り上げて来たこの音楽祭━━特にレ・ボレアードを率いる寺神戸亮の努力と実績は、偉とするに足る。

コメント

 1日目を拝見しましたが、東条先生のご意見に賛成です。特に、湯川さんの歌唱、演技は共に心惹かれる場面が多く、今年見たオペラの中でも白眉でした(衣装や役は黒い色合いでしたが…)。また、恒例…(?)の歌手とコンマス寺神戸さんの絡みの場面も健在、大ウケで、全体的にも、名アリアの散りばめられたこの作品を安定した音楽的内容で聴けた充実感が残りました。
 ただ、欲を言えば、演出の面で、全体的に照明が暗いことが多かったことや衣装が単調で華やぎに欠けたこと、そして、大きな額縁のようなもので、おそらく、拘束、とか捉われ(捕らわれ、囚われ)といったことを表現しようとしていたとは思うのですが、何か歌手が動きづらく、不要なバタバタ感をあたえてしまって、歌にも支障が出たのでは?と思う所もあったことでした。
 名アリア「私を泣かせて下さい」の所も途中まで蹲るような感じの座った姿勢、途中でようやく立ったかと思ったら、また最後は蹲るように座ってしまったので、何か音楽的にも思ったほど印象的な出来栄えにならなかったように記憶しています。もっと自然に、自由に、歌手に任せてしまった方が良かったと思います。
 この他、先ほど書いたように、照明が暗くてあまり見えなかったのですが、後で舞台写真(リハのもの?)を見た所、ズボン役のメゾに東洋風なヒゲを書いてしまっていて(これでは、お笑いになってしまう…)、歌唱が良かっただけに、少々、興ざめでした。
 毎年、ちょっとずつ、何か面白い部分をつくって、親しみやすく…という意図は感じられ、それはそれでいいのですが、無理にそうした部分は作らず、まずは作品自体の良さや美しさがが引き立つこと、ここに自信を持って主眼を置いて欲しい、と思う所です。

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