2020-04

2019・11・22(金)ケンショウ・ワタナベ指揮東京フィル

     東京オペラシティ コンサートホール  7時

 一度聴いてみたいと思っていた指揮者だ。彼は昨年夏の「セイジ・オザワ松本フェスティバル」で指揮したことがある(私はその演奏会は聴けなかった)。
 日本では未だほとんど知られていないが、今春まで3シーズンにわたり、音楽監督ヤニク・ネゼ=セガンの下でフィラデルフィア管弦楽団のアシスタント指揮者を務めていた若手(32歳)だ。今年1月31日~2月2日の同楽団定期演奏会に起用され、チャイコフスキー・プロ(第1交響曲「冬の日の幻想」他)を指揮している。

 聞くところによれば、彼は日本人の両親を持つ人で、名前の日本語表記は渡辺健翔なる由。
 それがわざわざケンショウ・ワタナベとなっているのは、きざな芸名というわけではなく、マネージャーがアメリカの団体だからだとか、「セイジ・オザワ松本フェス」デビューの際にそういう表記だったから今回もそうなった、とか、子供の時から米国暮らしだったから、とか、いろいろな話を聞いたが、自分で確かめたわけではないから、真相は知らない。とにかく、今夜の演奏会が所謂「東京デビュー」になる、とのことである。

 指揮した曲は、ラヴェルの「左手のためのピアノ協奏曲」(ソリストは舘野泉)と、マーラーの「交響曲第1番《巨人》」。
 とにかく若手らしく勢いのいい指揮をする人であり、小気味よい運びの音楽をつくる。長身痩躯、指揮棒を持たずに全身を躍動させてオケをリードする。

 ただ、最初の「ピアノ協奏曲」では、少々面食らったのは確かだ。冒頭個所など、普通の演奏なら、低音が神秘的に蠢き、それが夜明けのように光を帯びはじめる━━とでも言ったイメージになるものだが、今日の演奏ではそこが何とも荒々しく武骨に響きはじめたのである。
 そしてオーケストラを轟くばかりに鳴らすのだが、これがピアノと全く異質である。舘野泉さんも、もう昔のような水際立った爽やかなピアノではなく、むしろ翳りのある音色で、落ち着いた音楽を聴かせるというタイプの演奏家になっているだろう。ピアノの音がオーケストラの怒号にかき消されることが多かった。
 コンチェルトではソリストを立てる指揮のテクニックは未だしだな、と、私も途中で諦めてしまった。

 なお舘野さんは、ソロ・アンコールでスクリャービンの「夜想曲 作品9の2」(左手のための)を弾いてくれたが、これが実にあたたかく、聴き手の心にしみじみと食い入って来る演奏だった。

 だが予想通り、第2部の「巨人」では、ケンショウ・ワタナベの指揮の長所が一気に花開く。
 まず、音楽の流れがいい。第1楽章で「さすらう若人の歌」にも出て来るあの歌謡主題を支えるチェロのピッツィカートが、何とまあ快く爽やかなリズムとテンポで進められること。第3楽章を除く3つの楽章で、頂点へ向けて盛り上げる個所では、躊躇うことなくテンポを速めて一気に持って行くあたりも、若者らしくて好ましい。

 音を明確に響かせ、普通なら内声部に隠れて目立たぬモティーフをも、時にはっきりと浮き立たせるので、作品に新鮮感を生み出させる。エンディングの音をアクセント豊かに決然と叩きつけるところは昔のトスカニーニばりの強烈さだ。曲の前半ではオケの細部に粗さもあったが、次第にオケとの呼吸も合って来たようで、第4楽章では絶妙のピアニッシモをも聴かせていたのだった。
 いずれにせよこの人は、面白い指揮者だ。期待しよう。

 東京フィル(コンサートマスターは近藤薫)も、特に後半、よくこの若手を盛り立てていたようだ。

コメント

カーチェン.ウオンのマーラー1番

同じ日の午後、西宮兵庫芸文管弦楽団に同じく期待の若手のマーラ1番。彼は大響とのストラビンキー、ラフマニノフ2番を聞いていて期待して出かけた。メネセスのショスタコチェロ協奏曲1番。豊かな音量で響くチェロ、と、5分後弦が切れた。以前、諏訪内さん、ここでのチェロソナタでも切れた。弦の取り換え時間、ウオンさん前に出てきて話しかける。日本語で....ここのオーケストラの賛辞、マーラー1番が好きなこと、金曜日の午後にこれだけのひとが集まるのは異常(笑い}調律後再開、得した気分、彼は当代での名手だと確認できた。
マーラー1番、生で聞いた曲で1番聞いた曲だと思った次第。最初は50年前の岩城さん。今でも焼き付いている。
ウオン氏の指揮ぶりは左右の手を忙しく動かし第二ヴァイオリンに特に丁寧に合図をしていたり、また第二楽章の弦楽器の弱音部は後部の奏者だけで演奏させていたのも新鮮。対抗配置でコントラバスは正面後部に10人.金管奏者の左にいる2人(tp、トロンボーン)がいつ吹くのだろうとみているとコーダの部分だけだった。マーラーも贅沢なことをする、それにしても若く知情、運動神経にあふれた彼、ほかの曲でも聞いてみたい逸材だ。コンサートは23.24と続く。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | HOME |  »

























Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

最近の記事

お知らせ

●2007年7月以前のArchivesを順次、アップロード中です。併せてご覧下さい。
2007年7月
2007年6月
2007年5月
2007年4月
2007年3月
2006年7月

Category

ブログ内検索

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」