2020-04

2019・11・18(月)パーヴォ・ヤルヴィ指揮
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

   サントリーホール  7時

 5回公演の初日。「タンホイザー」序曲と、ベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第2番」(ソリストはラン・ラン)、ブラームスの「交響曲第4番」が演奏された。

 ダニエレ・ガッティの辞任により、首席指揮者のポストが空席となっているRCO。今回はパーヴォ・ヤルヴィが客演指揮者として同行して来たが、この顔合わせは、なかなか面白かった。

 まず、RCOの音だ。しっとりした美音、瑞々しくて厚みのある弦を中心とした上品なサウンド━━ハイティンク時代に私を魅了したあの「コンセルトヘボウの音」は、その後のシェフたるマリス・ヤンソンスやガッティの下では、ほとんど失われていたのではなかったか? それが今回、客演のパーヴォの下では、それがかなりの程度まで蘇っていたのである。
 また彼の方でも、N響やドイツ・カンマーフィルなどを指揮する時とは異なり、老舗RCOの伝統を尊重し、その固有の気品ある音を再現させようとしていた様子がありありと感じられたのだった。

 たとえば、ブラームスの「4番」━━その冒頭、主題をゆっくりと奏しはじめた弦楽器群の、驚くほど柔らかい、羽毛のような響きの素晴らしさ。
 あるいは第2楽章で、弦があの幅広い主題をdolceで奏し始める個所(第41小節から)での、まるで空中を漂う雲のような、軽やかな美しさ。
 RCOの弦は、昔ながらのものだった。とかくガリガリと、攻撃的な強さで演奏する指揮者とオーケストラの多い当節、このRCOの弦の音色は、私には、久しぶりに巡り合ったオアシスのように感じられた。老舗オケからこういう音を引き出すことのできるパーヴォ・ヤルヴィは、やはり並みの指揮者ではない。

 また彼は、「タンホイザー」序曲では、RCO相手の他人行儀の挨拶の如く坦々とした指揮ぶりだったのに対し、ブラームスの「4番」では一転して、第1楽章終結部や第4楽章コーダなどで、テンポを速めて猛烈に追い上げる劇的な昂揚感を生み出した。そこではもう遠慮などをかなぐり捨て、オケに真剣勝負を挑んで行くといったような姿勢が感じられ、これも面白かった。
 しかも彼はRCOを壮大に響かせながらも、常にその音には明晰さを保たせ、決して汚れた絶叫にはしないのである。パーヴォの本領ここにあり、か。

 協奏曲を弾いたラン・ランは、もうすっかり「大人の演奏」をするピアニストになった。この曲の叙情的な特徴を前面に押し出し、第2楽章の最後などでは音楽が止まるかと思われるほどの沈潜した演奏を聴かせる。彼のソロに備わっている瑞々しさと爽やかさを認めるのに吝かではないが、それにしても随分「難しい曲」を選んだものである。ソロ・アンコールにはメンデルスゾーンの「紡ぎ歌」を弾いた。

 オケのアンコールは、またブラームスの「ハンガリー舞曲」(今日は「3番」と「1番」)だった。彼の交響曲のあとのアンコールというと、必ず出て来るこの舞曲集。何か他に新機軸はないものだろうか。

 なお一つ、このオケには、安藤智洋という人が首席ティンパニ奏者として活躍している。今日も見事な演奏を聴かせてくれたのは嬉しい。

コメント

壮麗なのに手づくり感がある。

お疲れ様です。
19日のBプロ、ベートーヴェン4番とショスタコーヴィチ10番です。アンコールは、チャイコフスキーくるみ割り人形の「トレパーク」とシベリウス「悲しきワルツ」。
楽員が着席してから、楽団のステージマネージャーが2名、すぐには退場せずに細かく楽員に指示を出しているのを見るのは珍しい。しかも場内アナウンスが、やや不安定な日本語。楽団関係者と思われるがどうか。そうだとすれば、これも珍しい。
ショスタコーヴィチはパーヴォのオハコでもあるが、スターリンとか第二次大戦とかに拘らず純音楽として聴いても素晴らしい演奏。壮麗であっても手づくり感があり、人間的。今年の管弦楽演奏のベストを争うだろう。

大阪で拝聴しました

千秋楽の大阪でのプログラムは、ベートーヴェンの交響曲第4番と、ショスタコーヴィチの交響曲第10番でした。気品と気迫あふれる素晴らしい演奏だったと思います。パーヴォさんの指揮も圧巻でお見事でした。東条先生のおっしゃるティンパニの安藤智洋さん以外にも、ヴィオラの波木井賢さんもご活躍でした。拝聴出来て嬉しいです。

 19日のBプロを聴きました。ベートーヴェンの4番は、ドイツ・カンマーで演奏する時のような速さなのかどうか、と考えていましたが、考えていたよりも、ちょっとは遅めでした。ただ、やはり、他の指揮者に比べれば速い演奏で、果たしてこのテンポでこのオケの音色、音質の良さが最大限、効果的になっているのか、少々疑問には思いました。
 ショスタコーヴィチの10番は、2楽章や4楽章は機能的に、速く、堅実な良演で面白かったのですが、問題は1楽章だったように思います。
 以前、読響で故ロジェストヴェンスキーの演奏を聴きましたが、様々な旋律があたかも物語のように、または波のように押す所、引く所の妙とでも言いますか、有機的な連携があるかのように聴こえてきたのを覚えているのですが(文章にするのはやはり難しい…)、今回の演奏はフレーズごとに組み立てようとする感じはあるのですが、何かフレースごとに、ここはここ、あそこはあそこ、といった感じでバラバラでまとまっていない感じが個人的には結構、残りました(そんなことはない、とおっしゃる方もおられるでしょうが。)。
 今秋は、弟のクリスチャン氏がMDRライプチヒ放送交響楽団を率いて来日しており、ブラームスの1番、ベートーヴェンの5番を演奏していたのですが、こちらのは、言わば楷書でわかりやすく、生き生きと若いメンバーの力を引き出していて大変、良かったです。
 今後も、ヤルヴィ・ファミリーの活動に注目していきたいですが、パーヴォ氏のドイツ・カンマーについては、1度、基本的なテンポで、普通に演奏してどうなのか、実演で聴いて、本当の所の実力を他とわかりやすく比較してみたい所です。
 なお、開演前に場内アナウンスまで、楽団関係者らしき人がやっていたようだった(?)のはさすがに珍しく思いましたが、来日オケの場合、ステマネがステージ上で楽員にいろいろ、時に長く指示を出しているのは、意外とよく見られる光景です。

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