2020-04

2019・10・28(月)セミョン・ビシュコフ指揮チェコ・フィル「わが祖国」

      サントリーホール  7時

 昨秋、音楽監督・首席指揮者に就任したばかりのセミョン・ビシュコフが指揮。
 11日間に8公演、スメタナとチャイコフスキーの作品を核に、ドヴォルジャークは1曲(新世界交響曲)1回のみ。今日はスメタナの連作交響詩「わが祖国」だ。チェロは上手側だが、コントラバスはステージ奥に並び、ハープ2台は上手側と下手側に分けて配置されるというステージである。

 今回の「わが祖国」は、全6曲、休憩なしの演奏。
 随分前にこのような6曲ぶっ続けの演奏を聴いてヘトヘトになったことがあり、その話をラドミル・エリシュカにしたら、「そりゃそうでしょう、お察ししますよ」と笑われた思い出がある。だが今日は、さすがチェコ・フィルの醸し出す魔力のおかげというべきか、全く疲れを感じなかったのは事実であった。

 ただし、ビシュコフ指揮のその演奏だが━━これはもう、私などがこの半世紀以上レコードで、あるいはナマで聴き続けて来たチェコ・フィルとは、良くも悪くも、ガラリと違う。
 弦楽器群の音色にだけは昔ながらの美しさと温かさを留めてはいるものの、その他の面では、かつての素朴で瑞々しい陰翳も失われ、恐ろしく華美になった。あのしなやかな叙情は何処へ行ったのだろう? 

 もちろんこれは、あくまでも新・首席指揮者ビシュコフとの演奏における特徴であることを頭に入れておく必要があるだろう。だがそれにしても、今日のチェコ・フィルの音は、何とも鋭くて甲高い。オーディオ的に言えば「ハイ上がり」の、つまり「高音域が強調され過ぎた」音響なのである。ピッコロが異様に突出して響きわたるのにも辟易させられた。 
 ━━ということでこれは、正直なところ私の好みにはあまり合わぬ演奏の「わが祖国」だったと言わざるを得ぬ。

 ビシュコフのテンポは、ここではかなり遅い方だろう。演奏時間も通常より延びて、80分程度になっていたはずだ。「ヴィシェフラド」や、「ターボル」冒頭での遅いテンポの個所も、緊迫感を保てるぎりぎりの線まで強調されていた。そして「ブラニーク」大詰の昂揚の部分でも、ビシュコフは熱狂的にテンポを速めるということはせず、不動のテンポで、しかも音楽に仁王のような力感を漲らせつつ曲を閉じて行った。

 奇しくも今日、10月28日は、チェコスロヴァキア独立記念日にあたる。客席1階の一角には、チェコ大使館関係の人々だとか聞いたが、一団の人々がカーテンコールの際に起立して小さな国旗を振っていた。
 「わが祖国」━━これほどその記念日に相応しい音楽はあるまい。こういう音楽を持った国民は幸せだ。

コメント

今いずこ

お疲れ様です。
今回は10月20日と24日を聴きました。
概ね東条先生に同意です。ロシアの指揮者だから肌合いが違うのかなとか思いつつ、昔の味わい今いずこでした。特にホルンの独特の音色が失われていたのはショックでした。ズデニェク・ティルシャルは、遠くなりにけりです。僅かに、モルダウの冒頭で、フルート2重奏が濃厚な情感を出していたのが印象に残りました。

大阪で拝聴しました

大阪でのプログラムは、スメタナの[モルダウ]、チャイコフスキーの[ヴァイオリン協奏曲]、ソリストは樫本大進さん、それと[交響曲第6番]でした。樫本さんの演奏は圧巻でした。円熟味がありますね。お見事です。チェコフィルも素晴らしかったです。私は、以前のチェコフィルをあまり拝聴していませんが、今日の演奏は、印象的でした。

 私もこの公演とNHKホールの公演を聴きました。私も「わが祖国」の方の感想はピッコロの突出のことなど、東条先生に近いところもあるのですが、昔の音とは異なる所も多いとは言え、また別の味わいもあった気がしました。テンポも端折った演奏になるかも、と予想したのですが、メロディ・ラインもよく描いて、「昔」に拘らなければ、まずまずの好演だったように思いました。詳しいことは知りませんが、チェコ・フィルも次第にメンバーが替わり、音色の継続、というのもなかなか大変なことなのではないでしょうか。
 それよりも、とても唖然とし、呆れたのは、件の怪獣ブラボーです。2F下手の真ん中あたりだったでしょうか、「ガオー」とか「ギャー」としか聴こえないような爆音の声が何度も鳴り響き、閉口しました。人によってはブーイングにも聴こえたと思います。このような、演奏会の品位や質を下げ、周囲の人の聴力にも悪影響を及ぼす独りよがりな行為は絶対にやめて欲しいですし、このような人物は退場させるよう、ホール、興行元には検討をお願いしたいところです。(このような人は、正直、爆音に陶酔しているだけで、演奏自体も大してわかっていないはずです。)
 NHKホールのマンフレッド交響曲の演奏も、今まで自分がこの曲を聴いた中では、一番、と言ってもよい内容でした。マエストロはいつもの左右に体を揺する指揮ぶりから、この曲でもよいメロディ・ラインが紡ぎだしていたように思います。また、個人的に久々にNHKホールのオルガンを好演で聴けたように思いました。一方でヴァイオリン協奏曲の方は、ゆったりしたオケの演奏に比して、ソロは勢いはあるのですが、何かやや弾き急いでいるようにも感じられ、しっくりいかないところも聴かれたように思いました。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | HOME |  »

























Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

最近の記事

お知らせ

●2007年7月以前のArchivesを順次、アップロード中です。併せてご覧下さい。
2007年7月
2007年6月
2007年5月
2007年4月
2007年3月
2006年8月
2006年7月

Category

ブログ内検索

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」